ノエラプトル "谷川俊太郎質問箱" 2025年4月8日

谷川俊太郎質問箱
谷川俊太郎質問箱
江田ななえ,
谷川俊太郎
特にインパクトが強かったのは、谷川さんの「苦しみのグルメ」という言葉。 しんどいことがあったり、なにか失敗してしまったりすると、落ち込んだり、涙がこぼれてしまうこともある。そのときは自分を責めたり、相手を恨めしく思ってしまうけれど、月日が経ってみると意外にケロッとして忘れていたり。 そうしてふと思い出したときに、薄まった苦味と同時に、「あのときの自分、苦しんでたなー」と、ほんの少しじわっとする甘みを感じる(木肌を削られて、そこから甘い樹液がジュワっと出る……みたいな)。 特に今は慣れない環境で、沈み込んだりまた起き上がったりを繰り返しているけれど、「自分は苦しみのグルメなんだ!」と思ってやり過ごしたい。 また、「人間はどうして国を持たなければいけないのか」という鋭い質問があって、「国家ではない共同体モデルに人類の未来を想像することもできる」といった答えも面白かった。 要は植民地主義的な思想が積み重なってできたのが、国家というものなのだろうか。谷川さんの書かれているように、他民族や他の共同体を支配したいなどという欲望が、その土地や民族どうしを統一させ、一つの国がつくられる。その国はまた別の国と戦い、”勝利”すれば相手国を支配して統一できる。そうしてどんどん国の領土は大きくなり、人口も増えていく。 それでもまだ欲望は止まらず、さらに別の国を我が物にするために、支配者たちは戦争の準備をする。秀吉の朝鮮出兵とか、琉球やアイヌへの支配とか、世界大戦みたいに。 今まさに起きている、イスラエルやアメリカによるパレスチナでのジェノサイドも、パレスチナを完全に支配するという欲望のために、そこにいる人々は、ジャーナリストや医療関係者も含め殺害のターゲットになっている。 はるか昔から支配者たちの欲望に塗れている国のシステムを変えることは、すぐには難しいだろう。 けれど、谷川さんののこした言葉に少し勇気づけられた。 「苦しみのグルメ」として現状にもがきつつ、本を読んだり、人と話をしたり、情報をシェアしたり、創作活動をしたり、虐殺加担企業をボイコットしたり(逆にパレスチナ支援をバイコットしたり)、ちょっとずつ視野を広げていきたい。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved