
ノエラプトル
@Di_Noel02
2024年10月15日

伊藤野枝の手紙
伊藤野枝,
大杉豊
読み終わった
手紙って、世間全体に向けてではなく、その人その人に向けて書かれているものだから、書いた人と宛名の人との関係性がよく分かって面白い。それに伊藤野枝は、誰に対しても自分の考えや気持ちを包み隠さずに記しているから、彼女の竹を割ったような、芯の通った気性がびしびし伝わってくる。
前半部分には、野枝から大杉へあてたラブレターが載っていた。すごくラブラブな内容もあれば、恋人というより、ともに社会の不条理に抗い闘う”同志“として出てくる言葉もあって、ふたりの強い情熱と絆を感じる。
一方、大杉の前のパートナー・辻へ宛てた手紙は残念ながら残っていないそう。辻は野枝からの手紙を大切に保管していたけれど、太平洋戦争中に米軍のB29の爆撃で燃えてしまったらしい。戦争やジェノサイドは、こういった大切な遺品も一瞬で消してしまうんだなと、改めて恐ろしく感じる。
特に印象に残ったのは、野枝が内務大臣・後藤新平へ宛てた、約4メートルにもなる巻物の手紙。「私は一無政府主義者です。」から始まり、「あなたは一国の為政者でも私よりは弱い。」で終わる、毅然とした姿勢。
ただヤイヤイ煽っているのではなく、自分の立場・主張をまっすぐ表明し、相手が国家権力者であろうが恐れず立ち向かうところに強く惹かれる。
その28年という短くも激しすぎる人生は、もしもっと長く生きられたら、どんなものになっていただろうと想像せずにいられない。
彼女のような凄まじい行動力を持つ自信は全然ないけれど、世の中の理不尽やマイノリティに襲いかかる差別や暴力に対して、はっきりNOと言える人間でありたい。
