
ノエラプトル
@Di_Noel02
2025年1月25日

アルプスの少女ハイジ
ヨハンナ・シュピリ,
遠山明子
読み終わった
とにかくアルプスの風景描写が印象的だった。いかめしく聳え立つ岩山に、眩しいお日さまの下色とりどりに咲き誇る花たち、風に乗ってざわざわと枝葉をゆする樅の木。想像するだけでもうっとりしてしまうから、実際に見たときの感動は計り知れないだろうなと思う。
アルムのおじいさんの山小屋も好きだ。おじいさん手作りの三脚椅子やテーブルの温かみを感じるし、屋根裏にある干し草のベッドの上には星が瞬いていて、天体観測しながら眠りにつけるなんて、ロマンチックすぎる。朝食には、厚く切ったパンにトロリとしたチーズをたっぷり乗せ、ヤギのシュベンリから絞った甘ーいお乳をごくごくと飲む。シンプルだけど、大自然の中でいただくには最高のメニュー。
そして、まわりの人たちの幸せを常に考えているハイジの優しさにも、強く心を揺さぶられる。彼女の健気さや愛らしさには多くの登場人物たちが心を鷲掴みにされているが、本の世界すらも飛び超えて、「アルムにおいでよ」と自分に向けても手が差し伸べられているような気がした。
一方で山羊番の少年ペーターが、思っていたよりも嫉妬深くて、ハイジに会いにやって来たお医者さんやクララたちに腹を立てているのが驚きだった。しまいにはクララの車椅子を(もちろん彼女が乗っていないときに)谷に突き落としてしまうくらいだから、よっぽどハイジの存在が彼の中で大きかったんだろうなと思う。
原作では、ハイジが十歳のまま物語が終わっており、『赤毛のアン』や『若草物語』のように、主人公が成長して結婚する描写がないのも、この小説の大きな特徴だろう。
ところが原作の第一部・第二部が発表された後、別の人物によって第六部までが製作され、なんとハイジがブロンドヘアになったり、ペーターと結婚して子どもが生まれたりなど、とんでもない続きにされている。上に挙げた他の小説もそうだけれど、人気が出ると無理矢理にでも続編が作られ、世間の望む女性像へと引っ張られていってしまうのが何ともなあ……と思ったり。
ただ少なくとも、“原作”のハイジは、十歳のまま読者の心の友達であり続けてくれる。彼女に会いたくなったら、また読み返したい一冊だ。