
ケイ
@flyingkei
2026年9月29日
ペッパーズ・ゴースト
伊坂幸太郎
読み終わった
作中いろんな悲惨なことが起こるけれども、いやいや実は…と悲惨な気持ちのまま着地させず、もしかしたらハッピーエンドと言ってもいいのかもしれないと想像させてくれる救いのある余白が、伊坂作品のツンデレな優しさ。そういう意味で伊坂作品は基本的に安心して息抜き気分で読めるので好き。今回はメタ小説的な味わいもあり(なぜ最初に登場人物表が?という疑問がちゃんと回収されるし)、構成自体の面白さも堪能しました。
ニーチェ『ツァラトゥストラかく語りき』で提示された「永劫回帰」の思想がふんわりなのかガッツリなのか底流にあるけど、ストーリー上はそこが主筋なのではなく、作品としてはファンタジーな能力とリアリスティックな日常が織り成すいつもの調子の伊坂ワールド。ツァラトゥストラ未読なので「永劫回帰」については突っ込んだことは言えないけれど、ニーチェは基本的に近代ヨーロッパの形骸化したキリスト教信仰と偽善的クリスチャンを仮想敵として語ってるので、永劫回帰&超人思想を現代日本の一般人が自分へのメッセージとして受け止めるのはそりゃきつい(なんでそんな酷いことを!となって当然)と思います。でもこの辺は『ツァラトゥストラ』ちゃんと読んでからまた語ろうかな。
個人的には、猫への加虐は見過ごせないネコジゴハンター、世界的な環境破壊や凶悪事件の頻発には心悩ませる人物が、目の前の人間の苦痛には全く関心を示さないところが、軽妙でユーモラスだけどすごく恐ろしいなと…。ただこれも、身近な人のことは大切にもし失えば復讐をも企てる人間が、猫や他の動物への加虐に無関心(どころか娯楽化する)だったり、環境破壊や世界的紛争を気に留めないという「現実」を思うと、あえてのカウンターキャラクターなのかなとも。人は他人のために何ができるのか、他人のために何かすることで自分の生をどう意義づけていくのか、そんな大きなテーマも感じた一作。

