やん "ホメロス オデュッセイア 上" 2026年9月28日

やん
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@grilledyangyang
2026年9月28日
ホメロス オデュッセイア 上
テレマコスの物語から始まるのは意外だった。 これは『イリアス』という先行の超有名作が存在していて、オデュッセウスが聴衆にとって既知の有名人物だったからこその物語上の技巧なんだろうなと思った。 テレマコスとペネロペ、ゼウスの掟を悪用して屋敷に居座る求婚者たち、イタケの人々から物語が始まる。そこからテレマコスの旅立ち、スパルタ王メネラオスの語りが入る。 「あれ?あの機略縦横のオデュッセウスはどこいったんだ?」 と、読者の興味を引っ張る。 第四歌でテレマコスを歓待するメネラオスが、「君の父ちゃんオデュッセウスは、戦争でこんなスゲェ奴だったんだぞ」と、本人登場前に英雄としての格を高めておく。 そして、ついに本人が登場するのは第五歌。 オデュッセウスはカリュプソの島に7年いた。 「なにしてんねん!!」 楽士の詠う英雄オデュッセウス像と、現在の姿の落差がヤバいwww 上巻は全12歌なのに、オデュッセウスが本格的に登場するのは第五歌。引っ張るなぁ。 そういう意味では、本当に『イリアス』という超大作の正統続編という感じがする。 言うなれば、『ガンダムSEED』で伝説になったキラだが、続編『DESTINY』ではシンが序盤のメインキャラとして物語が進んでいたのに、中盤キラが登場すると、結局続編でもキラが主人公やってたみたいな。(おいばかやめろ) アイオロス島の風を集めた袋を開ける話や、太陽神の牛を食べてしまう話とか、笑っちゃ可哀想なんだけど、もう面白すぎるwww 約束は破っちゃダメ!絶対! あと、個人的にはどうしてもヘレネが好きではないらしい。 第四歌で登場したヘレネの台詞に身震いした。 曰く、 「トロイエの女たちは、声をあげて泣き悲しんでいましたが、わたくしは心中秘かに嬉しく思っておりました――すでにわたくしの気持は、帰国に傾いていましたし」 って、お前ぇぇぇ!?!?マジで言ってんの?? いや、メネラオスとテレマコスの前ではそう言うしかないのだろうけど、だろうけど……いやぁ、スゲェや、その面の皮。 ……と思っていたところで、ヘレネがテレマコスたちに飲ませた秘薬の下りを思い返す。 「悲しみや怒りも消し、あらゆる苦悩を忘れさせる」 「たとえ父母の死に遭おうとも、また面前で兄弟またはわが息子が刃物で殺されて、目の当りそれを観ようとも、その日のうちは頬を涙で濡らすことが絶えてない」 蓮の花からヤバい液体でも抽出してんの??? これがトロイア戦争の記憶を語る場面で出てくるのが、なにやら意味がある気がするのよ。 メネラオスがトロイア戦争を語り、ヘレネが都合の良い自己説明をする一方で、父を想い悲しみに打ちひしがれるテレマコスに「悲しみを消す薬」をワインに入れて振る舞う。 もし仮に、ヘレネがこの秘薬を常用していたとしたら。 ヘレネがトロイアから帰国の途上、エジプトでトーン王の娘ポリュダムナから渡された秘薬で、トロイア陥落のショックや戦争の記憶を麻痺させてなんとか生きているのだとしたら。 テレマコスに語っている時も、全部の辛い感情を薬で押し込めて...... ドラッグなしでは普通に生きられない中毒者みたいじゃねえか!!! 目ん玉グルグルの状態でテレマコスに「今の幸福」を話してるヘレネを想像すると、なんというか……何も言えんわ。 トロイア戦争の記憶を語る場面で、「悲しみを消す薬」をアイテムとして出してくるのは面白い。 「過去を語る」ことと「過去を忘れる」ことが同時に描かれている。 ヘレネは戦争を生き残った。でも、生き残った人間が必ずしも「何事もなかったように生きている」わけではない。 戦争を語ることと、戦争を忘れること。 そうして生きるしかない人もいる。 このスパルタでの歓待の直後、戦争の記憶を語り、戦争を忘れず、家族や故郷を忘れられず、帰りたいのに帰れないオデュッセウスが登場する。 示唆に富んだストーリー展開だと思った。
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