
ぬ
@tanu-nu
2026年10月4日

滅びの鐘
乾石智子
読み終わった
@ 自宅
予言の歌、瓦礫の王国、闇の獣と二つの民族の確執といった要素をモリモリに盛った王道ファンタジーだった。「人間そのもの」をファンタジーの物語にしたような印象。風景や心情の描写が少し独特で、それがファンタジー感というか魔法っぽさを醸し出していて雰囲気に浸れてとてもよかったんだけど、物語自体は後半が少し尻すぼみというか、急ぎ足に感じる部分があったな。どうせなら倍の長さで、もっともっと詳細に書いてくれてもよかった気がする。
とはいえ面白くなかったわけではなく、終盤までは面白く読んでたので余計「惜しい」という気持ちになってしまった。贅沢なんだな。
↓ここからネタバレ↓
封印されてた闇の歌い手タイダーと闇の魔物カイドロスが不気味さとか神秘的な雰囲気がなくて俗っぽかったので、もっと曖昧な存在のほうが好みだったかもしれん。しかし私が何より読みたかったのはイリアンとキース大公周りだったんだよな〜。ロベアンが欠片にやられてどんどん暴走していくのは痛々しいくらいだったのに、そのロベアンの行動原理であるイリアンがどうしてるのかずーっとわかんなかったし、実はイリアンもキース大公も他の色々なものも欠片の影響を受けていて……みたいなことをサラッと後から説明されても「そこが読みたかったじゃん?」となってしまったんだよな。
あとこれは完全に私のせいだけど、こないだまで北方謙三の水滸伝を読んでたせいで戦描写が物足りないし、「なぜデレギシク軍はローランディア軍が城包囲するの黙って見てたん?軍がないの?」とか「野営しないの!?」とか「投石器作る木材どっから出た?」とかツッコミどころが多すぎて、最終的に「トナカイや橇が必要な地域での行軍では排泄問題はどうなのか」について考えてしまった。だって北方はうんこの行方をちゃんと書いてくれたから……。
乾石智子は初めて読んだんだけど、上橋菜穂子が短い文章にギュッと圧縮した凄まじい情報量を込めるタイプなら、乾石智子は凄まじい文章量に細かい情報を丁寧に乗せるタイプって感じだった。そもそもの文字数が多いので、単純に「文字を読むこと」が好きな人は「読んだこと」自体に満足感があるかも。