
サブレとポッポの往復書簡
@snowflake
2026年10月4日
変半身(かわりみ)
村田沙耶香
読み終わった
感想
読書日記
@ 自宅
私たちが普段、常識と認識している彼是は、本当に真正なものなのか?
これは、村田沙耶香さんが書く作品の中で、ほぼ共通して読者に投げ掛けられる問いのひとつです。
この『変半身(かわりみ)』も、同じ様に、物語の舞台になる離島に伝わる奇妙な祭りの風習に対する、主人公たちの疑問が話の発端となり、物語が展開されます。
故郷の島で、昔から行われていたとされる残酷な祭り。しかしその真実は、一部の人間が捏造した性欲や暴力の捌け口に過ぎない嘘が発端でした。
その後、年月を経た故郷の島では、また別の覚えのない風習がすっかり浸透しています。それらもまた、人為的に改竄された嘘の歴史であり、それを手掛けた人物もまた、彼が盲信する別の人間の手でひらで踊らされているという虚構の連鎖が、当時から変わらず続いていたのです。
そんな故郷の様子に、陸は思わずこう口にします。
『みんな、自分に都合のいい嘘を信じるんだ。人間ってそういう仕組みなのかな?』
人間は生きていくために、例え嘘だと分かっていてでも、自分にとって都合がよいものを選びとっていく。
そして、それがいつしか真実になる。
偽のモドリをまつりあげた健吾や則雄。
モラハラに遭い、島に出戻ったあき姉ちゃん。
日々の生活のため、本当の歴史を捨てた島の人たち
。
そして、当時も今も、ずっと島の家畜であることを受け入れたままの高城くん。
物語の冒頭の、花蓮の発言。
『海で溺れる家畜の絵にしよう』
人間を捨て、自分たちは本当はポーポーなのだという新しい真実を受け入れたことで、この島にいた人間たちが『信仰』という名の逃れられない海の中で溺れていく未来。
その光景が、この時の彼女にはもう、はっきりと見えていたのかもしれません。
その中にはきっと、陸だけでなく、花蓮自身も含まれているのだと思います。
それを示すのが、94ページの彼女の発言です。
『一緒に逃げよう、あの日みたいに。 ~ あの日と逆ね。この島から逃げるんじゃなくて、この島が、人間島の外になるの』
村田さんの作品なので、それなりの覚悟はしていました。
それでも、この言い様のない心地の悪さ。
世界99や生命式で感じたものとはまた違う、嫌な読了感が残りました。