犬山俊之 "地球の鏡の中で (In th..." 2026年10月4日

地球の鏡の中で (In the Mirror of the Earth): イアン・ワトスン奇想短編集 (and other EXTRA-STRANGE stories by Ian Watson)
久々にSFらしいSFを読んだ気がします。難解で、とてもスラスラとは読めないのですが、その「腑に落ちなさ」を楽しむような読書体験。 例えば、世界に「眠る人」が7人しかおらず、「普通の人間」は二週間に一度ほど「夢を放出する(具象化して売ったり、他の夢と競わせたりする)」というような設定(表題作)。「理解」が追いつかないながらも、振り落とされないように読みました(短編なので何回も読み返せます)。主人公の名前がトマスで、「トマス・アクィナス」を連想させるように書いてあるのですが、肝心の「トマス・アクィナス」についての知識がおぼつかないので、どうにもスッキリとはいきません。これは、あとで調べてみなくては。 一番印象に残ったのは収録作の一つ「ジェインといっしょに鉱泉室(ポンプルーム)へ」。まず、このPump Room が何かわからなかったので、ネットで検索してみると、イギリスで18世紀に栄えた温泉療養の社交地とありました。あと、タイトルに「ジェイン」とあることから、おそらくジェイン・オースティンのパロディであろうと想像。かつての優雅な社交の場が、作品内「現在」ではディストピア小説の舞台となっています。この作品世界では荒廃したイギリスの町の気温が37度、湿度90パーセント、と書かれていて、アレ? なんか、2026年の夏みたいですが、作品が書かれたのは1982年。これも、自分はジェイン・オースティン作品をそれほど知らないので、もしかしたら小説のフレーズの引用などがあるのかもしれませんが、判別できず。悔しい。 と、まあ自分にとっては手強い作品集でしたが、全体としての印象はかなりよかったです。イアン・ワトスンの他の作品を読んでみようと思いました。Wikipediaに「ノーム・チョムスキーの言語理論を取り入れた」とあった『エンベディング』(1973年)が気になります▼
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