

犬山俊之
@inuyamanihongo
台湾在住日本語教師
- 2026年9月28日
いい子のあくび高瀬隼子読み終わった買った映画『インセプション』(2010年)では「夢の階層」を降りて行くという描写がありましたが、本作では「人間関係の階層」を潜っていくような、くらくらする感覚を味わいました。折り重なる層の、どこも重苦しくて息苦しい。読んでいるこちらは「どこかで浮き上がって深呼吸を」と願うのですが、人間関係に終わりはなく、息をつくことは叶いません。 芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』の時も感じましたが、高瀬隼子氏の作品は自分にとってホラーです。日常ホラー。日常の地獄めぐり。 あと、本書収録の短編「末永い幸せ」もおすすめ。子どものとき、結婚式で大人が口にする「花嫁さん綺麗ね」という言葉に全く同意できなかったというエピソード、自分もほぼ同じ経験があります。意味がわからなくて、ポカンとしてしまったのです。大人になれば、これがキレイに見えるのだろうかと思ったことを覚えています▼ 台湾華語(中文)版を教室用に購入したのを機に、日本語版も電子書籍で読んでみました。台湾の読者はどう読むのでしょうか。
- 2026年9月25日
国境廃絶論ルーク・デ・ノローニャ,グレイシー・メイ・ブラッドリー,柏崎正憲,梁英聖気になる読みたい - 2026年9月24日
助詞の使い分けとその手話表現 第1巻脇中起余子買った読んでる日本語教育偶然、帯を目にして購入。「『ここで書く』と『ここに書く』この文章を手話でどう表しますか? 意味の違いをどう説明しますか?」 本書の「はしがき」… 「聴覚障害があると、意識的な取り組みなしに助詞を自然に獲得することは、大変難しいです」と。 日本語教育というと、つい「外国人」とか、日本以外の地域の人々に対するものと考えてしまいますが、日本には手話が第一言語の方もいらっしゃるわけで、その方々にとっては日本語は第二言語になってしまうのですね。心して読みます▼ - 2026年9月14日
だれか、わたしを助けてエリカ・クラウス,古屋美登里気になる - 2026年9月14日
買ったかつて読んだ小池先生の新著『現代評論テーマ講義』がこの月末に出るということで、3年前の『キーワード講義』を本棚から出して来て復習をしています。 改めて、すごい本だなと。リンク先に目次があるので、見ていただきたいのですが、「植民地主義」「ポストモダン」「フェミニズム」「レジリエンス」などの手強い言葉の数々を見開き2ページずつで説明していくという力技……。いや、すみません、違いますね。今、勢いで「力技」と書いてしまいましたが、そういう読み味ではありません。 読んでいて、時々感じるのは著者がこちら見ている真摯なまなざし。語りかけるような文体は、同時に著者が見ている「聞き手」の顔をも浮かび上がらせます。本書のタイトルが「講義」となっていることの意味。この「講義」は著者が長年教室で行ってきた学習者との対話の中で作り上げられてきたものなのですね。古今東西の重要な著作からの多数の引用、具体的な事例の紹介なども、その時々の学習者が「うんうん」と頷き、顔を輝かせてきた瞬間瞬間の集大成なのですね。 小池先生の授業を受けることができたみなさんが、本当にうらやましいですが、我々は本書でその授業の片鱗を追体験できるのです。 また、本書は上記のようなキーワードの解説以外にも、重要語句のミニ辞典(たとえば、「抽象」という言葉の意味がパッと説明できますか)やブックガイドも充実していて、我々のような大人が読んでも本当に勉強になります。これ、著者もすごいですが、編集者の方も大変だったろうなと本気で感じる労作です▼ https://x.com/inuyamanihongo/status/2099133036424306865?s=46&t=qgz0QCHyeV_z7JOdBME2Bg * 以下は初読時の感想(2023) * [本] 『現代評論キーワード講義』 迂闊にも、タイトルが「解説」ではなく「講義」であることに読んでいて気づく。全編小池先生の肉声が聞こえてくるよう。「ナショナリズム」の項、引用がされるのが夏目漱石の『坊っちゃん』から榛葉英治の『城壁』、最後に『想像の共同体』。すごい流れ。大拍手。 - 2026年9月6日
つながる読書三宅香帆,仲町六絵,向坂くじら,安積宇宙,宮崎智之,小川公代,小川貴也,小池陽慈,岡本健,御手洗靖大,木村哲也,木村小夜,渡辺祐真(スケザネ),田中健一,草野理恵子,藤本なほ子,読書猿買ったかつて読んだ2024年6月にSNSに書いた感想 ### おそろしいほどの密度と熱さ。まず電子書籍で読んでいたのですが、これほどのボリューム感の熱意のかたまりが、コンパクトな新書サイズに収まっているとはちょっと信じられませんでした。 現代屈指の読み手(であり書き手)の方々による本の紹介を小池陽慈氏がまとめるという作りなのですが、小池氏自身の熱意もスゴイのです。イントロの途中で、「ちょっと出しゃばっていいですか」「もう我慢できないので、ちょっと朗読させてもらいます」とプレゼンターを差し置いて話し始めるのは笑ってしまいました。 * 第一部で紹介されている本は全て欲しくなるし、プレゼンターの方々自身の著作も読みたくなるという最高のブックガイドになっています。 また第二部には、紹介された本全体を俯瞰して小池氏と読書猿氏が語る対談があり、それに加えて、他のプレゼンターが紹介した本を、他のプレゼンターが読んでみるという第三部もあるという、本を重層的に読む面白さを堪能できる作り。唸りましたね。いいなあ。完成品としての本の出来がいいというだけでなく、こういう充実した仕事ができる人と場があるということがすごくうれしい。 * 個別の本で言うと、(既読の本はのぞいて)ぜひ読みたいと思ったのは『鼻行類』『オリガ・モリソヴナの反語法』。岡本健氏のプレゼンには最高にワクワクさせられました。また三宅香帆氏「あなたの将来に少しでも致命傷が残らないように。本を通して傷ついてほしいです」などの言葉は刺さりました。 それから、プレゼンターの方の著書を読んでみたいと感じたのは宮崎智之氏、仲町六絵氏。宮崎氏の文章、紹介も感想もすごく丁寧で優しく、それでいて急所をつく鋭さがあります。仲町氏の短歌「自転車で 降りてゆくとき 両手足 宙に伸ばして 怖がってみる」を知り、ぜひ哲学の道に行ってみたくなりました。 * さて、読み終わり、全てのページがおもしろいという、なかなか得難い読書体験ができる本書なのですが、個人的に一番印象に残ったのは田中健一氏の章。本の紹介というより「読む」ことの真髄に関する文章で、ここだけでも本一冊分の重量を感じました。さすがの一言。インパクトがありすぎて、「何の本の紹介だったっけ?」と書名を忘れてしまうほど。これは第三部で田中氏の「紹介」を受けて小川貴也氏が感想・解説(『漢文名文選』)を書いてくれている部分がすごくありがたいです。 * 最初にこの本を読む前に少し心配に思ったのは「10代に推したい」というような題名にすることで、今10代の読み手は敬遠するのではないかということ。自分が若かった時のことを考えると、「若者向け」なんていう打ち出しはどんなジャンルでもバカにしていたものです。しかし、読んでみて編者の小池氏もプレゼンターの方々も「10代」という枠はそれほど気にしていないように感じました。とにかく全編を通して熱い熱い言葉がほとばしっている。この熱意は必ず読み手に伝わります。若者も大人もぜひ本書を手に取るべし。その熱意で火傷する覚悟で▼ - 2026年9月6日
- 2026年9月6日
反穀物の人類史ジェームズ・C・スコット,立木勝気になる読みたい - 2026年9月4日
スマホ片手に文学入門小池陽慈買ったかつて読んだ2025年6月に他のSNSに書いた文章 ↓ 予備校の先生の本だし、帯にも「新時代の国語の教科書」とあり、自分も何かしら「勉強しよう」という心持ちで読み始めたのですが、おもしろくて楽しくてページをめくる手が止まりませんでした。「読み」のおもしろさ、「解釈」の醍醐味を体験させてくれる快著。「教えてくれる」なんて程度じゃなく、ダイナミックな「読み/解釈」の流れに放り込まれたような読後感でした。 第1章芥川龍之介『ピアノ』、第2章梶井基次郎『桜の樹の下には』、第3章宮沢賢治『やまなし』の3つ短編を小池先生と対話しながら読み進めるのですが、どれも何度でも読み直したくなりした。「読み直し」の楽しさ。 自分は『やまなし』が未読だったので、特に興味深く読むことができました。なるほど、最後の一文から、あのように読むのですね。 また、『桜の樹〜』は桜のイメージもさることながら、「独楽(こま)」についての描写がいいんだよなと思っていたところ、この部分にもちゃんと言及がありました。 ただ、残念なのは三章までしかないところ。まだ扱ってもらいたい作品はいくらでもあります。芥川の『蜜柑』とか小川未明の作品とか。強く続編希望です▼ - 2026年9月3日
- 2026年8月30日
文化の脱走兵奈倉有里気になる - 2026年8月25日
神戸・続神戸西東三鬼読み終わった買った電子書籍小林恭二の『三鬼』がよかったので、続けて西東三鬼自身によるエッセイ(?)『神戸・続神戸』を電子書籍で。 いや、びっくりするほどおもろしろかったです。「これは、ホンモノ」と感じさせる読み応え。 戦時中の現実離れした生活のアレコレは、阿佐田哲也の作品に近い雰囲気も感じました。もっと読みたい▼ ↑ ただ、人種差別コラム問題をウヤムヤにしたままの新潮社から購入してしまったのが…。
- 2026年8月23日
不倫に関する、ちょっとした疑問中村加代子,許俐葳読み終わった台湾恋は熱病というのは、よくある比喩ですが、本書は、言わば「ワクチン接種」を済ませていたはずの、(ジェンダー論を学んだフェミニストの)女性が既婚男性と関係を持ってしまう話です。 現代的でサバサバした書きぶりなので、さらっと読めてしまいます。しかし、お互い「わかっている」はずの二人が辿る道筋は、否が応にも「恋愛とは?」、「婚姻とは何か?」、といった問いを読み手に突きつけます。もっと言えば「人間関係」って何なんだろうと。 * (以下少し内容に触れます。所謂ネタバレ) ↓ 翻訳者の方が後書きで言及されていた第四章最後の会話について。 自分もすごく印象に残っています。ただ自分の場合は、「えらい!」と感心してしまったのです。お互いちゃんと口頭で了解を取り合っているのですから。こうした関係の始まりは、「一方的に/強引に」というのは論外としても、えてして「なんとなく成り行きで」となりがち(?)なところ、きちんと「わたしはこうしたい」と言えているのはすごいと感じました。この箇所だけでなく、他の章にも性行為について「こうしたい/こうしてもらいたい」と相手に伝えている描写があって(断られているところも含めて)いいなと思いました。相手がいてこその行為なのだから、事前に了承をとることは大事。 * 登場人物の考え方、生活の様子など様々な部分に現代の台湾を感じます。観光地だけでじゃない、台湾の空気を味わいたい方にもおすすめ▼ - 2026年8月23日
砂浜の、すみっこで シロチドリ観察日記孤伏澤つたゐ読み終わった買ったZINEおもしろくて、切なくて、そして「見る」ということの意味を深く考えさせられた一冊。 本書は砂浜で著者が偶然にシロチドリの擬傷行動に気づいたことから始まるひと夏の観察の記録です。擬傷行動とは、親鳥が卵を守るため、わざと傷ついたふりをして敵の注意を引きつける動き、ということなのですが、これ、例えば、私の目に入ったとしても、絶対気づけない世界です。それを、文字を通して、ですが、自分も「見る」ことができる、というおもしろさ。 夏の砂浜で起きる様々な出来事が、見ることの無力さ、暴力性、理不尽さ、など突きつけてきます。そして特にクライマックスもなく終わります。いや、終わらないのか。 「わたしは、いまもシロチドリのひながいなくなった砂浜を見つめている」。 読めてよかった▼ - 2026年8月18日
増補版 図説 台湾の歴史周婉窈買ったかつて読んだ台湾2023年にSNSに書いた文の転載。 * 台北二二八紀念館を見学すると、日本人が免罪された気になってしまう問題。 二・二八事件(1947年)はその後長く続いた中華民国政府による民衆虐殺事件、白色テロの発端となった出来事で、この紀念館には事件の経過、多く被害者の氏名など詳しい展示がある。 ただ、その語られた方が「それまでこの地を殖民地として支配していた日本も問題があったが、その後に来た国民党政権が比べ物にならないくらいひどかった」と。所謂「犬去りて、豚来たる」という話。 自分は今まで三回行ったことがあるのだけれど、毎回同様の話を日本語ガイドさんから聞かされた。 なにぶん聞き手である自分が日本人でもあるし(面と向かって批判しにくいし)、国民党政権の暴力を強調したくなるのはわかるのだけど、相対的にしろ「日本のほうがよかった」と言われると、勘違いしてしまう日本人もいるだろう(というか、実際に「いた」ので、これを書いている)。 だが、この二・二八事件からさかのぼること、52年前、1895年に日本の軍隊は台湾に上陸した。そしてその際「台湾の各地に、民衆が奮起して日本軍に抵抗したのは事実である。多くの死傷者を出し、流された血は川をなした」(『台湾の歴史』p.99)。我々は残念ながら、この時の正確な犠牲者の数を知ることはできないし、被害者の遺族の声を聞くこともできないが、武器らしい武器を持たなかった民衆が近代的な軍隊と対峙してどうなったのか想像はできる。 台湾民衆の悲劇というなら、それは二・二八事件の半世紀前に始まっているし、そこではもちろん日本こそが直接の加害者である。それを忘れて台北二二八紀念館を出て来てはいけない▼ - 2026年8月18日
講座・ある文学史野口良平気になる - 2026年8月16日
三鬼小林恭二ちょっと開いた買った若い時に『ゼウスガーデン衰亡史』に驚き、岩波新書『俳句という遊び』『短歌パラダイス』を何度も読み返した自分にとって小林恭二の新作、しかも西東三鬼についての小説と聞けば、読まないわけにはいきません。楽しみ - 2026年8月12日
ヒロシマ日記 〈改装版〉蜂谷道彦買った読んでる#夏休みオンライン反戦読書デモ2026 医師の目から語られる原爆投下の日からの広島の惨状。 文章がうまいのです。1ページ目から地獄に投げ込まれたかのような無茶苦茶なことが起きているのですが、それをどこか客観的な目が冷静に記述し続けています。(まだ途中) * 台湾中文版《廣島醫生》がこの昨年7月に出ました。多くの方に読まれますように。
- 2026年8月10日
- 2026年8月7日
日曜日の散歩者 風車詩社とその時代 精選版陳允元,鳳気至純平,黄亜歴気になる台湾欲しい
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