
チョム
@abb_20260521
2026年10月4日

読み終わった
再読した
ダ・ヴィンチで単行本が紹介されていたときに気になって、その後文庫化したのを見つけて手に取って読んだ。それからなんとなく思い出すたびに再読を重ねてきて、物語構造がうまいなあと、読むたびに思う。
飛び降り自殺した朱音をきっかけに全校生徒へアンケート回答が義務付けられたところから始まる本書の語り手は、同じ学校の生徒というだけで朱音と直接の接点のない「他人」、同じ教室で過ごしていたけれど同じ友達グループではなくちょっと会話したことのあるだけの「クラスメイト」、朱音がやたらと接点を持とうとしてくるのでウザいと感じていた「(朱音のことが)嫌いなクラスメイト」、朱音の友人と仲良くしている「友人の友人」、朱音から告白されて付き合っていた「恋人」、朱音と幼い頃から仲良くしていた「大切な幼馴染」と、赤の他人からだんだん朱音と近しい者へ移り変わる。
読者がそれらの語りを追うにつれ、朱音という一人の人間の見え方も変わってくる。
そして満を持して朱音本人が語り手となった章で、朱音がなぜ空を飛んだのか、その全貌がやっと見える。
朱音の幼馴染の純佳、そして朱音自身が語り手の章によってキリキリと疲弊した心の重さは、たった4ページのエピローグの最後の最後で明らかになった、朱音が空を飛んだ直後の出来事にスッと軽くなってしまった。
わたしは純佳の心の枷を外してあげようとした莉苑に大きな好感を持った。莉苑は祖母の言葉を自身の信念というか信条というかそういうものとして大事にしており、「大切な幼馴染」を喪った純佳に対する言動をとてもありがたいと思った。たとえそれが朱音の想いを蔑ろにするものであったとしても、朱音はもういないのだから。今後も生きていかなければならない純佳が、莉苑の言葉ですこしでも救われるのであれば。そう、それはまさに、第六章の裏テーマであった。
