irgendwohin "シチリアでの会話" 2026年10月6日

irgendwohin
@irgendwohin
2026年10月6日
シチリアでの会話
シチリアでの会話
ヴィットリーニ,
鷲平京子
ムッソリーニ政権下での反ファシズム運動の精神的支柱となった作品、というので興味を持ったものの、暗喩に満ちた寓話的な表現がなかなか読み取れず、先に解説から読み始めたら、その100ページを超える訳者による解説がめちゃくちゃ面白く刺激的。スペイン内戦時の抵抗運動(ゲルニカのあれ)が、イタリアでなかなか力を持てないでいた反ファシズム運動に火をつけたということなんだけど、そんなことは考えたことがなくびっくり。そもそも作者ヴィットリーニは、元はファシズム擁護派、というより積極的にファシズムを信奉し、ファシズム機関誌に執筆していた人。その彼がスペイン内戦を契機に、ファシズム政権の欺瞞と暴力性に気付き、抵抗運度に身を投じ、反ファシズムを宣言し同志を鼓舞する目的で書いたのが「シチリアでの会話」とのこと。 当時イタリアの反ファシズム地下活動に関わった多くの人に読まれ、「研ぎ屋」などの登場人物名を通名として使っていた若者も複数いたとか。 暗喩ばかりなのは検閲の目をかいくぐるためだけど、当時のイタリア人たちはここから作者の意図を正確に読み取っていたことにも驚き。なんという読解力の高さ! 解説を先に読むことをお勧めします。黙示録的な本書が指し示すものは、どのようにも取れるだけに、現代日本社会への警告としても意義深いと思います。 一つだけ不満を言えば女性描写かな。黙示録の体裁なので致し方なしとも言えるけど、同時代で必ず引き合いに出るパヴェーゼが「美しい夏」で見せた眩しいくらいの表現を思うと残念。
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