ミヤウヂ ヨウ "星新一の思想" 2026年10月7日

星新一の思想
星新一の思想
浅羽通明
先日、本屋さんで「星新一生誕100年」としてポップアップされており、気になって手に取りました。 本書は星新一さん自身についての論評というよりも、星新一さんの作品をベースに星新一さんについて論じる内容となっています。星新一さんが時代小説や幾つものエッセイを書かれていたことは恥ずかしながら存じ上げなかったので、読んでみたいなぁと思いました。中学生の頃、読書の時間などによく読んでいましたが、星新一さんの人となりなどはあまり知らなかったので、本書を拝読し「こういう方だったのだな」と新たに知ることも多かったです。なぜか、自分の中ではSF作家さんというより、ショートショートの第一人者というイメージが強かったんですよね。 個人的に、星新一さんの作品は登場人物がニュートラルというかフラットというか……あまり感情的でないのが、読んでいて心地好かったです。本来、小説や物語であれば、感情を揺すぶられてナンボ(これがいわゆる「文学性」なのでしょうか…)みたいなところがあるかと思うのですが、私はそれが苦手なので、物語そのものを大変面白く読んでいました。 実はこの感情的なブレが嫌なせいで、ドラマや映画、アニメもあまり見ません。漫画はかろうじて平気なのですが、なぜなら「あっ」と思うシーンは自分のペースでパラパラっと飛ばせてしまうからです。 ……改めて言葉にすると、自分は作者さんに大変失礼な態度をとっているので、本当に物語を読むのに向いてないですね…… 話が脱線してしまいましたが、本著を通じ、星新一さんは何かに偏った見方をしない人、常に俯瞰し、様々な立場から見えるものをある種のシニカルさを持って表現していた方なのかなぁ、と感じました。 また、「高校生になると星新一を卒業してしまう」という話が何度か登場し、理由として「恋愛要素が薄いから」「厨二病が発動して知的ワルを気取ってみたくなるから」とありましたが、個人的には「より残酷で凄惨な物語を読みたくなるから」かな?と考えています。 私自身は「現実の方がよっぽど悲惨で救いようがないから、せめて物語の中ではそういうことがない方が……」という卑屈な人間なのですが、自分の周囲を見渡してみると、本を読む読まない問わず、そういったものに惹かれる傾向が強くなっていく気はしました。より強い刺激を求めるのは人間の本能ではありますが、もしかしたらそういう顕在化しづらい残虐性を秘めているのもまた人の性なのかもしれません。 本書からは、いろんな視点で星新一さんの作品や人物像を評論されているものの、著者の方は本当に星新一さんの作品がお好きなのだな、というのが伝わってきます。故に400ページ超の本になるため、長時間読んでいると腕が痺れてきますが、スラスラと読むことができると思います。 ただ、個人的に以下3点ほど気になりましたので、念のため記載しておきます。 ・句読点の付け方が「これで本当にあっているのかしら…?」と気になる箇所がある ・全体的にですます調とである調が混在している ・本人が本当にそうかも分からないのに「アスペルガー症候群的」などとラベリングしている 特に最後に関しては、「人を喜ばせようとするサービス精神が旺盛だったが、その一方で厭人的な面もあった」とか「変人と呼ばれる奇行も数多くあった」とかの説明で良かったのでは…?と思いました。そこまでアスペルガーの症状を引き付ける必要がどこにあったのか……まぁ、今は「自称・発達障害」や「自称・アスペ」も多いですからね。それが他称になって、「キチガイ」と同じようなニュアンスを帯びていき、いつしか使ってはいけない用語となっていくのでしょうね。
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