masarumilano
@masarumilano
2026年10月7日
ハゲタカ2.5 ハーディ(上)
山田章博,
真山仁
読み終わった
面白い。間違いなく面白い。
それなのに、なぜか満たされない。
読み終えた後、真っ先に浮かんだ感想は「もっと欲しい」だった。
本作は『ハゲタカ』『ハゲタカⅡ』に続く物語でありながら、主人公は鷲津政彦ではない。ミカドホテル創業家の娘である松平貴子が中心となって物語を動かしていく。だから鷲津の登場が遅いことは理解している。これは作品の筋からして仕方がない。むしろ貴子を主役に据える以上、当然の構成だろう。
それでもどこかで鷲津の登場を待ってしまう。その存在感の大きさを改めて思い知らされた。
同じことはアランの死の真相についても言える。シリーズを通して大きな謎として横たわるこの問題に本作が踏み込んでいくのも当然の流れだ。避けて通れる話ではない。
しかし、それらを差し引いてもなお、何かが足りない。
「イマイチ」という言葉は少し違う。
不満というよりも飢餓感に近い。
もっと先を読みたい。
もっと深く知りたい。
そんな感覚が終始付きまとった。
興味深かったのは外資系企業の内情だ。
舞台が海外企業に移ったことで、合理性に支配された世界が描かれるのかと思いきや、実際には権力闘争、思惑、派閥争い、人間関係が複雑に絡み合う。
会社組織の魑魅魍魎ぶりという点では、日本企業も外資系企業も大差ない。
人が集まるところには必ず政治が生まれる。そういう意味では妙な安心感すらあった。
そして本作で何より気になるのは、副題にもなっている「ハーディ」という言葉である。上巻を読み終えた時点で、この言葉が単なるタイトルではなく、上下巻を貫くテーマそのものであることは明白だ。
なぜ貴子は「ハーディ」なのか。
その意味が明かされるとき、物語はどこへ向かうのだろうか。
個人的には、下巻では買収劇だけではなく、会社を再建することの現実をもっと掘り下げてほしい。
『ハゲタカ』や『ハゲタカⅡ』は「買う側」の論理を描いていた。
一方で本作には、買われた会社をどう立て直すのかという、これまであまり描かれなかったテーマがある。
もっとも、上巻を読む限り、その要素主菜というよりスパイス程度に留まりそうな気配もある。
私が期待しているのは、松平貴子が真正面からミカドホテルを取り戻す物語だ。
だが、中国資本側の狙いがまったく読めない。誰が味方で誰が敵なのか。そもそも貴子自身が大きなゲームの駒として踊らされているだけなのではないか。そんな疑念も拭えない。
結局のところ、タイトルが『ハゲタカ』である以上、正攻法だけでは終わらないのかもしれない。
プロキシーファイト。
買収合戦。
企業支配を巡る駆け引き。
そうしたシリーズのお家芸が待っているような気もする。
それでも私は期待したい。
「ハーディ」という言葉が象徴する強さが、最後には貴子を救うことを。
そして、その強さが単なる忍耐ではなく、自らの意思で未来を切り開く力として描かれることを。