irgendwohin "ボルヘスの「神曲」講義" 2026年10月9日

irgendwohin
@irgendwohin
2026年10月9日
ボルヘスの「神曲」講義
ボルヘスの「神曲」講義
ホルヘ・ルイス・ボルヘス,
Jorge Luis Borges,
竹村文彦
ボルヘスは、本作以外でも自著のあちこちで『神曲』がいかに至高の作品であるかを語っているけど、ではダンテが唯一無二かというと、そうは言わないのがいかにもボルヘスらしい。例えばダンテより600年ほど前のイギリスで(ベーダ『イギリス教会史』)、100年ほど前のペルシアで(アッタール『鳥の言葉』)、神曲で描写された目も眩む幻想的な地獄、煉獄、天国のイメージの一部は既に書物となって世に出ているという。

p.85「『神曲』のような偉大な書物は、ある一人の個人の孤立した、偶発的な気まぐれではない。多くの人々、多くの世代がこの書に向かっていたのだ。その先駆者を調べることは、法学者か警官に任せておけばよいような惨めな仕事に陥ることではない。それは人間精神の運動を、試行錯誤を、冒険を、直覚を、予感を探ることなのだ」

ちょっと法学者と警官に失礼すぎるけど笑、これこそボルヘスの宇宙観。世界はたった一人の著者によって書かれた物語だともどこかに書いてたな。言葉が現実を映すことの不可能性と、だからこそ時空を超えて無限の広がりを持つという神秘性を、同時に、矛盾などないかの如く語る。壮大なハッタリをかましてくる魔術師か詐欺師のようなボルヘス、やっぱりすごい。
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