
サブレとポッポの往復書簡
@snowflake
2026年10月10日

木曜日にはココアを
青山美智子
読み終わった
感想
読書日記
@ 自宅
青山美智子さんの代表作ともいえる連作短編集です。
日本とシドニーを舞台に、様々な人たちが、知らず水面下で繋がり、関わり合って、紡がれる12の物語たち。
誰かの優しさがふと恋しくなった時、自分の気持ちに自信が持てなくなってしまった時、この短編集に収められた物語のひとつひとつが、きっと心強い癒しの魔法をかけてくれると思います。
『ちちん ぷいぷい♪』
私の心に残った場面いくつかあげていきます。
★共感した場面
4作目の『聖者の行進』
話の途中で架かってきた電話に出た理沙に対する、ワタルと泰子のやり取りの一幕。
『「でも僕からしたら、他のお客様のことを考えてお店を出てくださって、マナーのしっかりした人だと思いますよ」
私は虚を突かれた。私が非常識だと思うことが、違う角度から見たら常識的ってこともあるのか。』
相手がお客様でも、卑屈になったり慇懃無礼になるでもなく、自分の感じたことをさりげなく相手に諭せるワタル。そして、驚きつつも、素直に自分になかったものの捉え方を正面から受け止められた泰子は、どちらも素敵な大人だと感じました。
子供の頃、理沙が泰子に何気なく気持ちを伝える場面。
『やっちゃんといると安心するよ。やっちゃんになら何でも話せるよ。だってやっちゃんは、絶対に影で悪口言ったりしないもの。その場かぎりの嘘をつかない人だもの。』
本当にそうだよね、っ思います。
だから自分も、改めて自戒を込めて、決して本人のいないところで、その人の事を悪く言ったり、噂話に出したりは絶対にしまい、と襟を正す気持ちになりました。
☆素敵だと感じた展開
6作目の『半世紀ロマンス』の中に、クリスマスツリーに飾り付けられた短冊のメッセージに触れるシーン。そこに書かれている『秋の桜』の本当の意味と込められた願いが、その後、話を超えてひとつの線になって最初と最後の二つのお話に繋がっていく展開。
この秋と桜、どちらもそれぞれ二つのの意味が込められていると考えました。
オーストラリアから見れば、日本の桜の咲く季節は現地では秋。そして、日本から見れば、オーストラリアでは春に咲き、桜に当たるとされる花がジャカランダ。
『秋の桜』と書いた短冊に、密かに願いをかけるマコと、それをツリーと共に見守るワタル。当人たちはまだ気が付かないけど、一見何でもないココアという飲み物が、この先の二人を繋ぐ鍵になっている点も含め、優しい世界って、気が付きにくいだけで、実はさりげない日常にちゃんと存在しているんだなぁって、改めて感じられたような気がしました。

