masarumilano "ハゲタカ2.5 ハーディ(下..." 2026年10月13日

masarumilano
@masarumilano
2026年10月13日
ハゲタカ2.5 ハーディ(下)
今までの会社買収や企業再生の延長線上にある経済小説かと思っていたが、本作は諜報、騙し合い、駆け引きの色合いが強く、シリーズの中でも異色の作品だった。 次巻『レッドゾーン』のあらすじを読む限り、本作は「中国」あるいは「中国資本」という巨大なテーマへと物語をつなぐ橋渡し的な役割を担っていたように感じる。その意味では、従来の企業再生や買収劇から国際資本同士の覇権争いへと舞台を広げる転換点の作品だったのかもしれない。 主人公・松平貴子は、物語を通じて確かな成長を見せた。周囲に翻弄されながらも己の信念を失わず、ホテルマンとしての矜持を持ち続ける姿には好感が持てる。しかし、その一方でミカドホテル奪還の決着にはやや物足りなさも残った。貴子自身の努力や成長は認められるものの、最終的な成果は周囲からもたらされた部分が大きく、どこか棚ぼた的に映ってしまう。 むしろ、たとえ格好悪くても、泥臭くても、自らの手で取りに行く姿が見たかった。読者としてはその成長の集大成となる「自ら勝ち取る瞬間」を期待していただけに、少々肩透かしを食らった印象である。 また、本作から『レッドゾーン』へつながる存在と思われる賀一華についても、現時点では大物感より危うさの方が先に立つ。将来の主役候補かどうかの判断は保留せざるをえない。今のところは自ら盤面を動かすプレイヤーというより、終盤に登場した大人物たちに利用される傀儡、あるいは捨て駒としての将来が見えてしまう。 最後に、個人的には真山仁は「企業や事業の運命」の描き方が魅力である作家だと改めて感じた。本作では諜報戦や国際政治の色彩が濃くなったが、私が最も引き込まれたのは、やはり企業や組織の行方を巡る駆け引きである。そうした意味では『ハーディ』はシリーズの中でもやや異色作ではあるものの、『レッドゾーン』へ向けて物語の視野を大きく広げたスピンオフ作品だった。
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