マグネット
@choccy1526
2026年10月11日
ソーネチカ
リュドミラ・ウリツカヤ,
沼野恭子
読み終わった
静謐で平易な文章が美しく、また何か素通りしかねないところに大事なものが潜んでいる感じがして、滋味のある小説。
客観的には不幸ともいえそうな状況にあっても、ソーネチカはただそれを受け入れ、そして主観的幸福を生きている。無理しているわけではないし、周囲の哀れみの目を理解していないのでもない。これを愚かと切り捨てるのも、稀有な才能と思うのも何か違う気がして、知らない感覚だと思った。
特に喉につっかかっているのは、ソーネチカが「幸福な結婚生活が幕を閉じたことを理解」しながらも、「こんないいことはない」と心から考え、ヤーシャを慈しんでいるように見えるところだと思う。夫と自分とが半ば一体化しているのかもしれないが、私はそれを危険で不健全なことと思って生きてきたので、ソーネチカの幸福を、自身の人生に対する主体的な解釈と思って良いのかわからなくなってしまった。
いずれにしても文章が素晴らしいのは間違いない。起きていることの良し悪しも振る舞いの善悪も、全ての判断が留保されているような語りで、そういうところもおもしろかった。いつか読み返したい。
