ピエ "幸福な無名時代 新版" 2026年10月19日

ピエ
ピエ
@pie_202
2026年10月19日
幸福な無名時代 新版
幸福な無名時代 新版
ガブリエル・ガルシア=マルケス,
旦敬介
ジャーナリスト時代のガルシア=マルケスが、ベネズエラはカラカスで1958年に書いた雑誌記事のセレクション。30年越しの新版での復刊、ありがとう…ありがとう… 独裁政権と戦う市民や聖職者、指名手配された政治活動家の逃亡譚、狂犬病の犬に噛まれた幼児の救命劇、ゴミ捨て場のど真ん中に居を構え全てを拾い物で賄う人々、クーデタをあわや食い止める緊迫した政治の駆け引き、などなど読み応えのあるルポばかりだ。 「1958年6月6日、干上がったカラカス」だけは事実に基づく記事ではなく、未来予測的な内容だが、自由な描写はほとんど小説のようだ。しかし、節水を呼びかける目的であろう記事で、このような終わり方をしてしまっては効果も半減なのでは…カタルシスを与えずにはいられない、小説家気質が顔を出してしまったのだろうか。 全体を通して存在感があるのは、不安定な政治に翻弄されながらもベネズエラに根を下ろそうとするイタリア人移民たちだ。ベネズエラ社会にも排外主義や労働力を安く買い叩く構造などが垣間見えるが、それでもこの地に留まり、家族を呼び寄せ、あるいは結婚して子どもをベネズエラ人として育てる人々が多く取り上げられている。 特に最後のルポを読んで、今の日本は「犠牲を払うに値する」国からどんどん遠のいてしまっていることを思った。この国のために死ねるなどということではなく、この国のためになるならちょっとばかし懐を痛めてもいいよ、と思ってもらえるくらいにはなりたいよな。
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