
ミオReads
@hanamio03
2025年4月15日

黙って喋って
ヒコロヒー
読み終わった
ヒコロヒー氏が勧めた「アボカドの種」を書いた俵万智氏がほとんど同時期に大絶賛していたのがこの本で、だからわたしの中ではなんとなく対の気持ちでいたし、一緒に読みたいなぁと思っていた。
「とんでもないものを読んでしまった」というのが率直な感想だ。
読みながらずっと「これはとんでもない」「やばい」「なんだこれは」「良すぎる」「とんでもない」「待って」「マジ無理しんどい」とオタクらしく大慌てしていた。良かった。恋だった。人の大きな流れの中に一瞬だけ存在する「恋」の瞬間を、右と左の手のひらでそっとせき止めてすくい上げ、当人にはすくい取られたと感じさせないまま「はいどうぞ」とお出しされたような、そんなリアリティと信じられないほど上手すぎて気持ちいい言語化と苦しくてしんどくてつまんなくて辛くて愚かしい恋の弾けるような輝きがあった。
読んでいてよだれが出てくるようなクズ男やダメ男がたくさん出てくる。恋に落ちないのが無理な男たちだ。泣いている女たちは「大事にされていない」ことに気付いたり気付かないふりをしたりわたしは絶対、こんな男を好きにならないと息巻く姿がもう恋そのものだったりする。
「景太くんのことを好きになる、ということは、未来の香山を探せオーディションに自ら腕を回し奮って参加するということで、そんなとんでもないオーディションで見事な合格を蒔ち取ろうという女など、まともであればいるはずがないのである」
たまらない。
あとがきにある「共感しましたと言われると、おいなにしとんねん、ちゃんと幸せになれと思う」という言葉に、また一つ、この本を好きになる。なにもかもよすぎる本でした。


