うら "" 2025年4月16日

うら
うら
@11
2025年4月16日
門
夏目漱石
前期三部作の中で一番好き。 慎ましく暮らす夫婦の日常に、貧しさや子のできない虚しさが見え隠れする。どんな時も互いを真に想い合う夫婦の絆は美しいが、それでも性差や社会的な役割の違いからか分かり合えない感情も在るのがまた切ない。 最後に、御米がやっときた春を嬉しがる一方でまたすぐ冬が来るのだと下を向く宗助の描写から、同じ罪の意識を持ちながらも完全に心が通じ合うことはないのだという虚しさと、過去の罪からは逃れられないという事実の残酷さが見えたように思う。 他の二作品よりも登場人物の心情が複雑で深みがあるからか、はたまた自分の未来のように見えてしまったからか、物語に引き込まれた。 御米が健気でいじらしくて可愛い。幸せになっておくれ。
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