やた
@Yatax
カルト団体を題材にした、というあらすじだけで興味を持って読み始めたけど、「ヤベー団体のヤベー実態」みたいなシンプルな話ではなかった。
ある思想と理想に基づいて運営される〈ミライの学校〉。それについて「普通じゃない」「関わるべきではない」と言う人もいれば、短期間であれ実際にそこで過ごしたことのある法子にとっては全てが悪い思い出ではない。
〈ミライの学校〉に対してだけではなく、単純に好きか嫌いか、許せるか許せないか、愛しいか憎いか、きれいな思い出か思い出したくもない黒歴史か、人それぞれ、対象それぞれへの想いはそんなに単純にくくれない、色んな感情があっていいんだと肯定してくれるような作品だと感じた。
たとえば自分が母親へ抱く感情は、年齢を重ねるにつれて変化してきた。愛されたいのに愛されないと思うこともあったし、長らく自己肯定感の低さに苦しんできた原因は母親だと思うこともある。ずっとそばにいて喜ばせたいと思う時もあれば、できるだけ距離を取りたいと思う時もある。
これからもきっと変化していくだろうし、それが自分の望む変化ではないかもしれないけど、無理にわかりやすい形におさめる必要はなく、自分の感情を尊重して良いんだと思えたし、他人の感情も同じように決めつけたり乱暴にまとめたりせず、尊重していくことができたらと思った。