
霧
@yoruto
2025年4月25日

精霊の木
上橋菜穂子
読み終わった
借りてきた
本文、p206より抜粋。
「あのな、おれはいっつも思ってた。テレビなんかで、大芸術家かなんかの特集をやるとき、ナレーターが、『彼は後世に偉大な芸術を残せたのです。それだけは、いつまでも生きつづけるのです』って言うだろ。でも、じゃあ、その他大勢の人は、どうなるんだ? なにかを残せた人は価値のある人生を生き、そうじゃない人はむなしいのか?
何億年っていう時のあとには、人類そのものだって、消えてるかもしれないのにな」
「そう思ったとき、頭の中がしらっちゃけていくような気がしない?」
「だけど、じゃあ、死がなかったらむなしくないのかっていうか、ーーちがうな。
だけどさ、なんで、生まれたあとから教えられたり、考えたりしたことで、生きてることがむなしいなんて考えが出てきちゃうんだ? それって、なんか変だと思わないか? たとえばさ、不幸な人が、人生なんてつらくていやなものだっていうのはわかるんだ。そう感じる場合、あるはずだもんな。でもむなしいっていうのは、ぜったいどっかおかしいとおれは思うんだよ」
