こかげ
@mttg
2025年4月25日

サクリファイス
近藤史恵
読み終わった
(ネタバレあり)
石尾さんの得体の知れなさが怖く、チカが結果を出せば怖くなり、チカが石尾さんのためにレースの勝利を手放せばほっとしてしまった。途中までの石尾さん本当に怖い。
最初に描かれた惨劇の場面はミスリードだろうというのは途中で勘が働いたけれど、石尾さんが亡くなるとは思ってなくてちょっとびっくり。あまりに唐突なので、作中でチカが石尾さんの死に実感が持てないのとシンクロした。
前半は不穏さはありつつもスポーツ小説の雰囲気だったけど、石尾さんのレース中の事故死を境に一気にミステリになった。謎解きが2回あるのも嬉しいポイント。
真相を知って思ったのは、この後袴田と香乃はどうなるんだろうか、ということだった。主人公のチカは石尾さんの思いを受け取って前に進んでいくけど、袴田は復讐も完全に達成できたわけでもなく、恋人を復讐の道具に使ったし、今後幸せになれそうに思えない。袴田が何をもってして幸せと感じるかは分からないけど。
あと、その復讐を不発に終わらせたチカにはちょっとスカッとした。
石尾さんは良くも悪くもロードレースに対して誠実で、愛を持っていたんだなと思った。死の直前に笑っていたのには、何となく救われた気がした。
この作品も、ロードレースへの愛で描かれたものなのかも知れない。競技の特殊な点を落とし込んだ物語からはロードレースの魅力が感じられた。