
amy
@note_1581
2025年4月30日

読み終わった
感想
『あらがうドラマ』を読んだ。著者の西森さんはドラマに関する記事を中心に様々な媒体で文章を書いていらっしゃるライターさんである。
日本のドラマのみならず、他のアジア圏の作品にも精通している西森さんが「日本のドラマはつまらない」という声を、ドラマ好きな人たちからこそよく聞くという体験から、日本のドラマでもおもしろい作品があることを共有するために書いた本である。
『組織と労働』・『恋愛の現在地』・『生殖』・『性加害』・『たたみゆく暮らし』・『出会いと分岐点』・『虎に翼』という構成になっており、最後のほうには『虎に翼』の脚本家である吉田恵里香さんとの対談も掲載されている
章立てにしたがって複数の作品を取り上げ、それぞれどういったことを描いているかを丁寧に書いてくれている。すでに見ている作品もかなりあったが、『性加害』の章で取り上げられていた『ファーストラヴ』は、映画版とは別にドラマ版があることを本書で初めて知った。
私は映画版を見たことがあったが、個人的にはあまり好みではなかった。その理由は、西森さんが本書で書いているように、主人公である心理士と担当弁護士との人間関係が主にフォーカスされていたからだと、読んでいて気づいた。ドラマ版では、少女を性的に搾取している構造や、いかに女の子(女性)の周りには偽物の神様がいるかという点に焦点が当てられている内容で、私はそこにこそ興味を持ったし、本書を読んですごく見たいと思った。NHKさん、どこかで再放送してくれないだろうか……。
この本に取り上げられていて、まだ見ていない作品も複数あったが、いずれもすごく見たくなった。『問題のあるレストラン』や『一橋桐子の犯罪日記』も見たい。
また『虎に翼』にまるまる1章使っているところは胸が熱くなった。私はSNSで西森さんをフォローしているが、私も西森さんも他のフォローしている人たちも『虎に翼』の放送期間は作中で『はて?』をぶつけ続け、今まで見過ごされてきた事象や、存在することすら認識されていなかっただろう人たちを話の中に登場させ続け、私が知る限りもっともロックなドラマになっていて、盛り上がっていたのだ。それだけあらゆるテーマを内包していたのだと思う。
最後まで読んで、実際に私も楽しく見ていた作品が多かったこともあり、「日本のドラマでもおもしろいものはたくさんある」と胸を張って言える。……とはいえ、今もなお注目を浴びるプライムタイム枠では、マイノリティ属性の人たちが出てくる作品や、ポリティカル色の強い内容は多くはないのも事実だ。
こうした本が出ることで、そうした内容のドラマも「おもしろい」と感じてもらえることが伝わってほしいし、もっとそうした作品が増えてほしいと思う。
ちなみに今クールの私の推しドラマは、『対岸の家事』と『しあわせは食べて寝て待て』と『ソロ活女子のススメ5』である。



