
えみ
@caleidoscopi0x
2025年3月6日
魔女の宅急便 完結6冊セット
広野多珂子,
林明子,
角野栄子
借りてきた
かつて読んだ
角野栄子『魔女の宅急便』シリーズが福岡の電子図書館にあったので順番に借りて読んだ。紙の本でも持っているのだけれど、4巻までしか多分ないのと、読んだのが子どもの頃だったので1から読み返してみることにした。宮崎駿監督のアニメ映画「魔女の宅急便」ではもっとフェミニズムの思想が色濃く入っているような感じがしてまたちょっと違う気がしたので、原作では何が主眼に置かれているのかをちょっと意識して読んだよ。文章は児童文学のため平易だし、なにより面白いのでいつもよりも速いペースで読み進めることができた。
『魔女の宅急便』以下『魔女宅』はキキの成長する過程を描いていて、シリーズを通してキキが13歳を迎えるところから35歳のお母さんになった姿まで読者は目撃することになる。ただし、最後の巻ではキキの子どもに焦点が当たるため、キキの物語は5巻までかなという印象。この成長の過程を読めるのがこのシリーズの面白さの半分を占めていると思ったが、面白いのはそれだけではなかった。
読み終えて納得したのは、『魔女宅』はタイトルの通りの魔女の仕事に書きたいことが詰まっていたということだ。キキの仕事である宅急便は、物を運ぶだけではない。物だけでなく、目にみえない「モノ」も運ぶので「もの」が適切かもしれない。何度も繰り返し出てくるのが、宅配を頼まれたキキが経験するちょっと不思議な出来事。明らかにファンタジー(空を飛ぶ魔女が出てくる時点でファンタジーなのかもしれないがそれは据え置くとして)の展開だこれ、というところまでいかずに、依頼主や受け取る人個人個人特有の世界が見え隠れするという構成がどの巻でも登場する。
私たちはアナロジーを通してそれぞれに固有の物語の中で生きている。それは、社会から見たその人の物語とは異質で、整合性が保たれていない場合もある。極端な例をいえば客観的には妄想と言われるようなことを信じ込んでいるといった具合である。それは程度の差こそあれ、誰にでも当てはまる。キキはそういった各々の世界と現実を媒介する存在で、空を飛ぶことよりも、実は媒介者であることが何よりもすごい魔法で、この『魔女宅』シリーズのもう半分の面白さなのだ。通常、誰かの物語に入り込むにはかなり親密な関係でないと実現し得ないし、今は科学的に考える人が多いので、どんなに親密な相手であってもその人の物語に寄り添える人は少なくなっているように思う。
キキ、そして魔女たちは、人々の各々の物語に寄り添ってくれる稀有な存在であり、『魔女宅』とは、人それぞれの世界や目に見えないものの大切さを教えてくれる読むとほっとできるような幸せな物語だった。