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@1038sudf
2025年5月3日

奇書の世界史
三崎律日
本書の構成はパンドラの箱と呼べるかもしれない。
本書では数奇な運命を辿った書物=奇書と定義し、さまざまな本を紹介する。その中には偽書もいくつか紹介されており、嘘を語ることの悪影響をいやでも知ることになる。
だが、最後に紹介される「月世界旅行(ジュール・ヴェルヌ)」では、夢物語という嘘によって現実が進歩するという事例が示される。
そして本項のラスト。
「人はよく「現実とフィクションの区別もつかないなんて」という皮肉を語ります。しかし私たちは、かつて空想にすぎないと一笑に付された物語のなかに生きているのです。 「世界」という歯車を誰よりも駆動させる者とは、誰よりも空想のなかに生きる者のことなのかもしれません。」
本で嘘を語るのは悪影響かもしれないと思わせつつ、最後に嘘から出た真が出てくる。この構成によって、内容は重たいながらも読後感を爽やかなものにしている。