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@bunkobonsuki
文庫本を中心に読んでいます。 アカウント名の読み方は「マイナスおなじマイナス」です。
  • 2025年11月26日
    ギフテッド
    ギフテッド
    詩を通して成功したかった母と、ホステスとして働く娘の関係を描く『ギフテッド』。浮世離れした生活をする祖母と、AV女優の化粧を担当する主人公が何気なく融和する『グレイスレス』。 二つの中編が収められた本書は、どちらも性産業の中身を細部まで書かれている。一人称で書かれているからこそ小説として成り立っているが、もし三人称で書かれていたらルポとして読まれていたかもしれない。 性にまつわる話とのことで、愛憎交わる展開が待ち受けているかと思えば、驚くほど淡白に物語は進む。映像にすれば過激になるものを、静かに描けるのは小説の特権だ。
  • 2025年11月24日
    ハロー・ワールド
    大抵の場合、SF(サイエンス・フィクション)は「はるか未来の技術」あるいは「過去の世界に現代技術を移植した異世界」の話になりがちだ。 しかし、本作『ハロー・ワールド』はそのどちらでもない。現代技術をテーマにした極上のSF小説なのである。ビットコイン、アプリケーション、ドローン・・・・・・。本作に出てくる色々なテクノロジーは、今まさに我々の手元に存在するものだ。 本作の序章となる『ハロー・ワールド』は、これだけでも一編の長編にできる濃密である。他の作家が書けばゆうに100ページは超えるところを、59ページに圧縮したという感じがする。 『ハロー・ワールド』以降も濃密な短編が続くので、合間に休憩を挟みながら読まれたし。
  • 2025年11月22日
    小僧の神様・城の崎にて
    「志賀氏は、その創作の上において決して愛を説かないが氏は愛を説かずしてただ黙々と愛を描いている。」 菊池寛がこう評したように、志賀直哉の短編には愛に関する話——それも不倫——が多い。それにも関わらず読み手にいささかの不快も起こさせない。 他の作家が描けば人間の闇をどす黒く描いたサスペンスになるものを、あくまでも穏やかに解決させる志賀直哉の構成と文章は、凸凹の心を平らに均してくれる。
  • 2025年11月19日
    炎のタペストリー
    魔法ファンタジーが舞台の冒険譚。 少女エヤアルはかつて<炎の鳥>と呼ばれる存在をその身に宿していたのだが、ある日、山を焼き尽くすという惨劇を引き起こしてしまう。炎の鳥は姿を消し、エヤアルも魔法を使えなくなる。 惨劇を引き起こしたエヤアルに残されたのは、すべてを覚えられる驚異的な記憶力だった。戦争のために徴兵され、惨禍に巻き込まれていく中で強かに生きる少女の一幕を描く。 ライトノベルでない魔法ファンタジーモノは初めて読んだ。作者の筆致が静かで優しい。非現実でありながら登場人物の息吹が感じられる作品だった。
  • 2025年11月16日
    増補 責任という虚構
    「責任感を持て」「責任を取れ」という激励は人生の一場面を彩る。だが、「責任」は本当に成立しえる概念なのだろうか?誰もが知っていて、しかし論理的には複雑怪奇な単語を論じた一冊。 この本を多感な頃に読んでいなくて良かったと心から思う。こんな面白いものを読んでいたら、親や教師、友人に議論をふっかけまくっていただろう。それほど刺激的な読み味がした。 詳細は本書を読んでほしいのだが、人種差別に対する問いかけが痛快だった。 「◯◯人が殺人衝動的な遺伝子を持っているとあなたは言う。そうするとそれは遺伝子の問題であって本人にはどうにもできない。◯◯人に責任は求められない」 といった主張が出てくる。 これを読んだ時は「人種差別に対するもっともスマートな回答だ」と心が震えた。
  • 2025年11月14日
    パーティーが終わって、中年が始まる
    Phaさん。 思わず「さん」付けで呼びたくなる作家名である。単純に「Pha (ファ)」だけだと味気ない気がするのに加えて、シンプルに「さん」と付けたくなる文章を書く人なのである。 そんなPhaさんが書く内容は、至極ありふれた物事だ。その中に鋭い表現がさりげなく入ってくる。 この本の中では「シェアハウスを運営していた頃を回想する」部分があるのだが、その際にPhaさんは自身のリーダシップを「天皇制」と表現する。正確にはシェアハウス仲間から言われたことを書いているのだが、読んでいてすごく腑に落ちる表現だった。 天皇制のエピソードに限らず「腑に落ちる」文章が何度も出てくるので、文章を味わいたいという人は一読してほしい。
  • 2025年11月13日
    測りすぎ
    測りすぎ
    なんという簡潔な題名だろう。 『測りすぎ』というタイトルは、現代に蔓延る測定主義に対する警鐘として完璧な言葉だ。私はこのタイトルに惹かれて本書を読み始めた。 ——本書を読み終えた感想としては、「測定って無理じゃね?」だった。定式化や測定に縛られた人々は、しばしば測定できるものしか見なくなる。測定できないものは「ムダ」「価値がない」として切り捨て、やがて非倫理的な行動をする。 仕事を定量化して評価する。 当たり前のように見えて、実は異常なのかもしれない。
  • 2025年11月2日
    デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する
    SNSに時間を取られてしまうことを防ぐために、スマホを手放す——。デジタル・デトックスをするために、しばしばそのようなことをする人がいる。 しかし、大抵の場合はすぐに元の生活に戻る。そう、SNSがしかける蟻地獄へ、分かっていても沈んでしまうのだ。 その困難を解決するには、単なる定期のデジタル・デトックスでは足りない。もっと日常的な、デジタルにおけるミニマリストになる必要がある。 『デジタル・ミニマリスト』。本書を読んでいくと、ただSNSの情報を閲覧・発信するだけでも依存してしまうということが分かる。 私も本書を見習ってSNSから離れてみよう。 もしかしたら戻らないかもしれない。
  • 2025年10月31日
    VTuber学
    VTuber学
    「過去ってのは今に繋がる過程だ なら今ってのは未来に繋がる糧だ」 ラッパー・FORK(ICE BAHN)がとあるラップバトルで発した一言は、本書を読み終えた私の感想にピタリと当てはまった。 アバターがあり、演者がリアルタイムで演じる。この形態そのものは前からあった。Vtuberの前身かつ類似例としてよく取り上げられる「タートル・トーク(ディズニーシーのアトラクション)」では、主役たるクラッシュが観客の質問にリアルタイムで答える。 ただ、クラッシュの場合はキャラクターと中身が厳然と区別されている。 「Vtuberもそうじゃない?」 そう考える人もいるだろう。ただ、本書の第三部ではそうした区別に哲学的な分析を投げかける。ここを読むと、Vtuberが単なるアバターを着た配信者ではないことが分かるだろう。 VTuber。 それは現実とフィクションが複雑に混合した、新たなる生命体である。
  • 2025年10月29日
    科学の社会史
    西洋科学の歴史を解説した本・・・・・・というだけでは興味を惹かれないだろう。本書の魅力は、科学しようとする人々の変遷にある。 「プロフェッショナル」「サイエンティスト」 これらの言葉はいまや誰もが当たり前に使っているが、その言葉が生まれた当時は奇特なものだった。 科学はもっぱらアマチュアが志すものだったし、科学だけを追求するサイエンティスト(科学者)も明確に宣言されなければ生まれなかったのである。 西洋科学を知るとともに、科学者がどんな存在であるか学ぶのに適した一冊である。
  • 2025年10月28日
    会話の0.2秒を言語学する
    ゆる言語学ラジオでパーソナリティを務める著者が、「私たちはどうやって会話をしているのか?」を解き明かそうとする本書。 タイトルにある0.2秒とは、私たちが会話において話し手と聞き手が交代する時間だ。私たちはわずか0.2秒で①聞いた内容を整理→②話す内容を考える→③複雑な発音で伝えるということをしているのだ。 自分たちが普段やっていることを理解し、問い直し、深く知る。人を解明しようとする営みは、このような知を生み出してくれる。 著者自身は「言語学を専攻したわけではない」と断っているが、むしろ専攻していないからこそ入門書のように言語学を解説できたのだと思う。
  • 2025年10月27日
    会話を哲学する
    会話を哲学する
    コミュニケーション。それは相互理解のための会話であり、人を操作する営みでもある。 本書では、情報をバケツリレーのように伝達する「バケツリレー方式」のコミュニケーション観を批判し、一つの会話にいくつもの異なる営みが含まれている「約束事の形成方式」のコミュニケーション観を確立する。 本文では各章に会話の例として漫画を取り上げている。そのため、漫画のワンシーンの解説としても読むことができる。言語のトピックは身近でありながら難解に陥りやすいが、例題が漫画のため最後まで読みやすかった。
  • 2025年10月24日
    なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか
    なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか
    かつて、経済学者ダグラス・マクレガーは労働に対する人間の態度をX/Yという二つの項目に分類した。 一つは「人間はあくまでも怠惰であり、脅迫されなければ仕事しない」というX理論。 もう一つは「人間は動機があれば進んで仕事する」というY理論。 現代はY理論を採用する人間で溢れている。仕事こそが夢を叶える唯一の手段だ——。そんなY理論の人間が辿るのは、かくも恐ろしいバーンアウトという末路である。 この本を読んで背筋の凍る思いがした人もいるだろう。私たちが普段"持たされている"情熱は、反転すれば自己を永久凍土に変えてしまうものだ。
  • 2025年10月23日
    サロメ
    サロメ
    司馬史観という言葉があるように、マハ史観という言葉があっても良いように思う。 そのような感想を抱くほど、本作「サロメ」は史実として説得力がありすぎる。フィクションのはずなのに、「本当にあったんじゃないか?」と錯覚しかけてしまう。 本作の主人公は画家オーブリー・ビアズリーの姉メイベル・ビアズリー。彼女は女優として大成することを夢見ていた。弟のオーブリーは趣味で絵を描く日々。そんな中、二人は名作家オスカー・ワイルドと出会うことで人生の歯車を狂わされていく——。 解説が中野京子というのもポイント。 本作の解説者としてこれ以上の適任はいないだろう。
  • 2025年10月21日
    ペッパーズ・ゴースト
    未来が視える教師の体験談。 生徒が書いた悪人退治の小説。 テロ事件の遺族による告白。 三者の物語が入れ替わり、溶けあう物語。 それこそが「ペッパーズ・ゴースト」である。 超能力や超常現象が混じりあったミステリは、なんでもありになりがちだ。それだけに「ああすればよかったんじゃないの?」と言いたくなるものもある。 しかし、本作は型破りな世界観でありつつも絶妙に「なんでもあり」を回避している。本作の主人公の未来視能力も、飛沫感染(!)しなければいけないため便利ではない。 次々に不可思議に見舞われるのに、なぜか納得してしまう。そんな作品である。
  • 2025年10月18日
    水中考古学 地球最後のフロンティア
    海の底に沈む遺物を探す学問、水中考古学。 日本ではマイナーといえるこの学問の魅力を、同学問の第一人者である佐々木ランディ氏が解説する。 いわゆる学術系の入門書なのだが、装丁から中身まで"気合いが入っている"本である。著者の本書にかける想いが詰まっていると分かる。この本はぜひ紙で読んでほしい。 個人的なポイントは紙に若干の青みがかかっているところだ。水中を思わせるような淡い青が、より内容を引き立てる。
  • 2025年10月17日
    (霊媒の話より)題未定
    安部公房の処女作「(霊媒の話より)題未定」を筆頭に、初期の短編や未完成の断片を集めた短編集。 作品の中には原稿が散逸したために結末や続きが分からなくなってしまったものも多いが、それだけに作者の才能が際立ち、続きを望みたくなる。 個人的には「白い蛾」から読むことをおすすめしたい。この話は安部公房にしては珍しく心温まる物語で、文体も柔らかい。ハードコアな世界観で知られる作家だが、書こうと思えばこういう物語も書けるのだと驚かされる。
  • 2025年10月13日
    領土
    領土
    小説と詩。両者の間には越えられぬ敷居が存在するはずだった。その境を溶かす小説集が「領土」である。 現代幻想文学の名手、諏訪哲史の最新作たる本書は、十編の短編集である。ページを繰るにつれて小説らしさを失い、詩のような形式で物語が進む読書体験は、この小説集でしか味わえない。 本作は、幻想文学ひいては小説そのものにおいて新境地を切り拓いたといえよう。諏訪哲史の著作では珍しい文庫本なので、気軽にオススメできる。
  • 2025年10月9日
    つながらない勇気 ネット断食3日間のススメ
    「つながらない勇気 ネット断食3日間のススメ」 タイトルだけ見ると、よくあるデジタルデトックス系の本かと考えてしまう。 ところが、この本では単なるデジタルデトックス以上の話が展開される。ネットことばによって書きことばが衰退するという、もっと踏み込んだことを書いている。話の展開としては「日本語が亡びる時」に近い。 現代において、未来において、日本語はどうなるのか。大きな問いに著者が挑む。
  • 2025年10月5日
    鳥類学者 無謀にも恐竜を語る
    特定の動物群を研究する者が、他の動物を語る。そんな本はあまりないだろう。ましてや、語る対象が絶滅しているとすれば、まず本としての企画が成り立たない。 しかし、その困難をすべて乗り越えた奇跡の本がここにある。 『鳥類学者、無謀にも恐竜を語る』である。 本書の内容は、鳥類学者の著者が鳥の知識をもとに恐竜についてアレコレ考察したり空想したりするというものだ。 その流れで恐竜が鳥へ生まれ変わる過程も説明してくれる。「鳥は恐竜の末裔なんだよ」という話を聞いたことはあるが、詳しくは知らないという人は、ぜひ本書を取っていただきたい。
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