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@bunkobonsuki
文庫本を中心に読んでいます。 アカウント名の読み方は「マイナスおなじマイナス」です。
  • 2025年8月24日
    駈込み訴え 太宰治集 (古典名作文庫)
    口述筆記で書かれたことで有名な太宰治の『駆け込み訴え』。本作はタイトル通り、駆け足で、喘ぐように吐き出される文体が特徴。 イエス・キリストを神の子でも聖人でもなく一人の人間として愛したユダの苦しみが、読者の共感を呼ぶ。師の清濁を憎しみ、慈しむ姿勢は、裏切り者と言い切るには酷なほど純情である。 偉大なる師を傍で眺めるという文学作品は、中島敦の『子路』でも見受けられる。孔子と子路の関係は、本作のイエスとユダにそっくりだ。 しかし、ユダが清濁併呑しながらも裏切ったのに対して、子路は孔子へ疑問を投げかけながらも最期まで信じ切った。両作を併読して、師や弟子を比べてみるのも面白い。
  • 2025年8月9日
    ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)
    小さな生き物、ブラフマン。 ブラフマンはひょんなことから主人公と出会い、語り手の住む「創作者の家」の一室でこっそり生活する。居候となったブラフマンの、おてんばかつ愛らしい描写が印象に残る、そんな小説。 そんなブラフマンの日々を読む内に、ふとタイトルを思い出す。 ああ、そうだ、この小説は「ブラフマンの埋葬」なのだ。何万文字もの墓碑銘なのだ。
  • 2025年8月5日
    貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」 (幻冬舎新書)
    貧困に関する事柄ついて著していた著者が、脳に障害を負ったことで、かつて取材していた貧困層の人々の思いを再解釈、翻訳した本。 貧困は教育不足、として語られやすい。 しかし本書は、脳機能の異常から来る貧困を論じている。筆者の体験談から「脳に障害を負うと仕事にどんな悪影響が生じて、周りからどう見られるか」が語られる。 この「周りからどう見られるか」がこの本の肝だと個人的に思っている。「アイツはやる気がない」と軽蔑を向けた先には、十二分のやる気がありながらも貧困に喘いでいる人がいる可能性がある。そのことを知れただけでも嬉しい。
  • 2025年8月5日
    NHK出版 学びのきほん 「読む」って、どんなこと?
    教科書で読めない読み方、教科書で読んではいけない読み方、教科書的なはずなのに違う読み方。 学校教育に則った文章読解に、実例を出しながら少しずつ疑念を呈していく。 考えてみれば、文章読解とは不思議なものだ。 数学の教科書に載る定理の文章は、もっとも解釈の余地がない、そのまま読めば理解できるもののはずだ。しかし、それを理解できず「数学は苦手です」という人は後を絶たない。私も苦手である。 正確なはずの文章が、どうして人々に理解されないのか。「読み」は単純ではないということの、自分なりの例を見つけられた気がする。
  • 2025年8月4日
    恋せぬふたり
    恋せぬふたり
    本作は、恋愛感情を持たない男女が、周囲の圧力から逃れるために籍を入れるところから始まる。周囲の「恋愛するのが当然」という無言の了解の残酷さと、それに対抗し、恋愛とは何かを考える物語。 本作のとある登場人物が発する「恋愛というだけで何かしら正当化されてしまう」という主張には、頷いてしまうものがある。
  • 2025年8月1日
    2010年代海外SF傑作選
    2010年代海外SF傑作選
    海外SF小説のワールドカップとも言うべき、とんでもない豪華本を見つけた。 著名のSF作家たちの短・中編を一書にまとめあげた本書。その見所は、各編にある編者の紹介文である。 著者の来歴と本編のあらすじを書いてくれるため、海外SF特有の独特的な専門用語や文化的背景の見えずらさが解消されている。 地味に翻訳側もすごい。 各編で翻訳者は異なるのだが、その中に円城塔がいる。日本のSF作家が海外のSF作品を翻訳するという、かなりレアな体験ができる。 本書はタイトル通り2010年代のSFを集めている。2025年の今、後5年すれば2020年代版の本書が出るのだろうか。
  • 2025年7月28日
    「好き」を言語化する技術
    文章術の本懐を、本書は完璧に実現した! 本書は「推し」を持つ者たちに向けた文章指南本だ。「この愛を周りに広めるにはどうしたら良いか」を文章術に落とし込んでおり、付録としてワークシートが付いている。 文章術系の本そのものは何度も刊行されているし、本書の文章術も既存の類本と多くの共通点を持っている。 だが、読者に熱量を持たせるという点において、本書は同ジャンルの本を突き放している。 文章術本の目的は読者に文章術を実行させることだ。類本が「仕事に使える」「小説家を目指すひとへ」という日常から離れた場面を描くのに対し、本書は「推しを広めるたい」という身近な欲求に根ざしている。 だからこそ、文章術に血肉が通い、読者が持つ熱に薪をくべてくれる。本書がベストセラーと化したところに、いかに人々の表現欲が燻っていたかが見てとれる。
  • 2025年7月25日
    「居場所」のない男、「時間」がない女
    仕事一筋の生き方を強いられ、仕事以外に居場所のない男。 家事・育児・介護などマルチタスクに追われ、時間がない女。 男女間の軋轢の本質を「時空間の歪み」と表現する、異色の社会派エッセイ。 SNSで呟かれる「女・男っていいよな」論は、だいたいこの本によって論駁されるだろう。男女間のいがみ合いがなぜ続くのか、いかに論点の違いによって平行線を辿っているのか、本書を通じてよく分かった。
  • 2025年7月22日
    ユニクロ潜入一年
    SPAでアパレル産業を一変させたとされるユニクロ。 その裏側には、過酷な労働環境で悲鳴を上げる人々がいた。 著者がユニクロの店舗に潜入・勤務し、内部から問題を暴く。 労働における業務効率化は、大抵「一人に負荷を集約させる」の言い換えである。ユニクロの労働環境は、その最たる例といえよう。 ここからはネタバレになってしまうが、終わり方が良い。 潜入・勤務を続けて著者が抱いた思いは、「社長も潜入してはどうか」というもの。社長と敵対していた著者が、最後に見せた提案は、単なる批判を超えて胸にくる言葉となる。
  • 2025年7月20日
    デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義
    2025年7月20日、参議院選挙当日。 投票をした人々に読んでもらいたい本がある。 「デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義」 本書では、アメリカの選挙においてSNS(TwitterやFacebook)における投稿が世論をどう操作しているかを明らかにする。 本書ではアメリカを事例にしているが、日本でも同様のことが起きていると感じる。誰かが言ったことを自覚せずに自分の意見としていることがないだろうか。 もしまた投票する機会があれば、本書を読んで、自分の意見の源はどこから来ているのか考えてもらいたい。それは人間が考えたものではなく、ただそれらしいことを言うボットの意見かもしれない。
  • 2025年7月18日
    ナチュラリスト
    ドリトル先生物語を読み、昆虫少年だった著者。 そんな彼の原体験から始まり、「自然を愛する人=ナチュラリストとはなにか」を探るのが本書である。 タイトルから自然に関連する本だとは思っていたが、いざ読むと中身はある意味で"大自然"だと感じた。 ドリトル先生シリーズの解説・翻訳・聖地巡礼、ナチュラリストとなる過程、生物学におけるアマチュアの存在意義、イギリスの知的分野。これら複雑な話題が渾然一体になっている。 文体もすごい。NHKの「ダーウィンが来た!」のナレーションのような文体から、「私」を主語にした硬派な文体まで、幅広く網羅しているのだ。 自然を語る本は数多く存在するけれども、自然を感じさせる本はそうない。本書はその貴重な一冊だ。
  • 2025年7月14日
    新版 「読み」の整理学
    既知のものを読むアルファ読み、 未知のものを読むベータ読み、 ふたつの読み方に分けた著者は、現代の国語教育がアルファ読みに傾いているとして批評する。「思考の整理学」の著者が送る、読み方の指南書。 この本は読書人の反省として読むことができる。本を読んでいくにつれてジャンルが固定化され、気がつけば同じようなものばかり読んでいる・・という経験は、誰にでもあるだろう。そんな時、ベータ読みという単語を思い出してもらいたい。
  • 2025年7月10日
    サッカー店長の戦術入門
    現代サッカーの巨匠、ジョゼップ・グアルディオラ。彼の戦術の遍歴から始まり、彼に対抗する形でさまざまな戦術が紹介される。 サッカーの戦術をめぐる一大絵巻をぐっとプレス、コンパクトにした一冊。 物語の構成が上手すぎる。 多種多様な監督が出てくる第二部では、一見タイプの違う人々に共通点があり、監督たちの戦術がグラデーションのようにつながっていく。 つながりが見えないようでいて、確かな系譜があったことを発見する喜び。そうした喜びを得たい人に本書をおすすめしたい。
  • 2025年7月9日
    リアルの私はどこにいる? Where Am I on the Real Side?
    バーチャル空間が現実と同程度に発達した世界で、バーチャル空間から現実に戻れなくなった女性が主人公を訪れる。 そんな折、バーチャル空間で国家が独立するという事例が発生した。 二つの事件が重なり合い、事態は現実とバーチャルの両方を巻き込んでいく。 森博嗣が紡ぐWWシリーズの一冊。 筆者はなにも知らずに手に取ったので、専門用語を分からないまま読んでしまった。それでも世界観に引き込まれる。 仮想現実が発達したら、現実がいらなくなる。 現代日本でも治安悪化や少子高齢化が取り沙汰されるけれども、本作のような世界が実現すればそれらも解決してしまう。 近く訪れるであろう「バーチャル空間が現実を超える時代」、その時に考えられる問題に対して、本作が参考となるかもしれない。
  • 2025年7月5日
    砂の女(新潮文庫)
    文学者の中で最初にワープロを使ったとされるほど、テクノロジーに関心を寄せていた作家、安部公房。「砂の女」は、彼の代表作である。 本作で安部公房は表現に対する貪欲な姿勢を見せる。物語の最後には「主人公はいまだに見つかっていない」という事実を、公的文書の体裁を用いて表現している。たった二枚の文書だけで、作品そのものの印象を際立つものにした。 安部公房は多彩な比喩が世界的作家の所以とされるが、その根幹には、文章にとどまらない表現自体に対する造形の深さがある。
  • 2025年6月30日
    ロリータ
    ロリータ
    現代でも使われている「ロリータコンプレックス」という造語が作られたのは、この大作がきっかけだった——2025年版新潮文庫プレミアムカバーの一冊を飾る本作は、500ページ以上に渡って濃密な情景描写とヒロイン「ロリータ」の記述が展開される。 興味深いのは、いわゆるロリコンの被害者とされる少女——無垢で、あどけない、非力な子どもとロリータの人物像が正反対なことだ。ロリータはとてもませていて、会話だけ聞くと高校生かと思ってしまう。 ロリータコンプレックスの語源を知る上で、また現代のロリコンという言葉を再考する上で、刊行当初より読む意義を増している。 本書にフォーカスした新潮文庫、ありがとう!
  • 2025年6月27日
    虐殺のスイッチ
    虐殺する側は残酷で悪辣な人たちなのか? むしろ、善人が集団になった結果、虐殺が起こるのではないか? 地下鉄サリン事件を引き起こしたオウム真理教。彼らのドキュメンタリーを撮影した著者は、オウム信者とされる者たちが善的な振る舞いをすることに驚き、同時に彼らを糾弾する社会が平然と権利侵害を行うことに疑問を抱く。 なぜ虐殺は起きるのか?自身の体験も交えながら、虐殺のメカニズムを追究する。 本書を読むと、伊藤計劃の「虐殺器官」をしばしは想起する。この小説では"虐殺の文法"という人々を戦争に駆り立てる文法が登場するのだが、この本に触れて「そうした文法は本当にあるのではないか?」と納得してしまう。
  • 2025年6月24日
    陰翳礼讃・文章読本
    読書家なら一つは持っている(持っておきたい)であろう「バイブル」。筆者にとって本書こそがバイブルである。 陰翳礼讃、文房具漫談、岡本にて。 これら三編も端正な随筆であるが、本書の目玉はやはり最後の「文章読本」だろう。古典を読む意味、外国語を取り入れる際の注意点など、日本語に向き合った谷崎の卓見が展開される。
  • 2025年6月21日
    戦闘美少女の精神分析
    戦闘美少女の精神分析
    本書が文庫本として刊行されて25年。 戦闘する美少女はさらに増え、美少女が主役のアニメが覇権を争う光景は当たり前の光景となった。 なぜ美少女が戦うのはこうも魅力的なのだろうか?アニメを見る側(オタク)を論じながら、戦闘美少女が生まれる背景を探った一冊。 個人的に紹介したい一文がある。 「『サブカルチャー』は、徹底して表層的であることによって、われわれを魅了し続けるだろう。それは『複雑な人格』は描き得ないかもしれないが、『魅力的な典型』をしばしば産出する。」 サブカルチャーがなぜ魅力的か、なぜ戦闘美少女が生まれるのか、端的に表した文章だと思う。
  • 2025年6月18日
    読書バリアフリーサポート入門ー誰もが読書を楽しめる社会へー
    視覚、聴覚、四肢など、身体に障害のある人が本を読むにはどんな支障があるのか。また、現在そうした支障への対策はどのようなものがあるのか。読書のバリアフリー化に向けた事例をまとめた入門書。 本書を通じて、電子書籍リーダーのデザインはよく考えられていると実感した。本書に書かれてある障害を克服するには、kindleやkoboといった電子書籍リーダーの存在は欠かせない。 紙本派 or 電子書籍派という宗派論争は続いているが、障害という視点から見直してみてほしい。
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