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@bunkobonsuki
  • 2025年7月10日
    サッカー店長の戦術入門
    現代サッカーの巨匠、ジョゼップ・グアルディオラ。彼の戦術の遍歴から始まり、彼に対抗する形でさまざまな戦術が紹介される。 サッカーの戦術をめぐる一大絵巻をぐっとプレス、コンパクトにした一冊。 物語の構成が上手すぎる。 多種多様な監督が出てくる第二部では、一見タイプの違う人々に共通点があり、監督たちの戦術がグラデーションのようにつながっていく。 つながりが見えないようでいて、確かな系譜があったことを発見する喜び。そうした喜びを得たい人に本書をおすすめしたい。
  • 2025年7月9日
    リアルの私はどこにいる? Where Am I on the Real Side?
    バーチャル空間が現実と同程度に発達した世界で、バーチャル空間から現実に戻れなくなった女性が主人公を訪れる。 そんな折、バーチャル空間で国家が独立するという事例が発生した。 二つの事件が重なり合い、事態は現実とバーチャルの両方を巻き込んでいく。 森博嗣が紡ぐWWシリーズの一冊。 筆者はなにも知らずに手に取ったので、専門用語を分からないまま読んでしまった。それでも世界観に引き込まれる。 仮想現実が発達したら、現実がいらなくなる。 現代日本でも治安悪化や少子高齢化が取り沙汰されるけれども、本作のような世界が実現すればそれらも解決してしまう。 近く訪れるであろう「バーチャル空間が現実を超える時代」、その時に考えられる問題に対して、本作が参考となるかもしれない。
  • 2025年7月5日
    砂の女(新潮文庫)
    文学者の中で最初にワープロを使ったとされるほど、テクノロジーに関心を寄せていた作家、安部公房。「砂の女」は、彼の代表作である。 本作で安部公房は表現に対する貪欲な姿勢を見せる。物語の最後には「主人公はいまだに見つかっていない」という事実を、公的文書の体裁を用いて表現している。たった二枚の文書だけで、作品そのものの印象を際立つものにした。 安部公房は多彩な比喩が世界的作家の所以とされるが、その根幹には、文章にとどまらない表現自体に対する造形の深さがある。
  • 2025年6月30日
    ロリータ
    ロリータ
    現代でも使われている「ロリータコンプレックス」という造語が作られたのは、この大作がきっかけだった——2025年版新潮文庫プレミアムカバーの一冊を飾る本作は、500ページ以上に渡って濃密な情景描写とヒロイン「ロリータ」の記述が展開される。 興味深いのは、いわゆるロリコンの被害者とされる少女——無垢で、あどけない、非力な子どもとロリータの人物像が正反対なことだ。ロリータはとてもませていて、会話だけ聞くと高校生かと思ってしまう。 ロリータコンプレックスの語源を知る上で、また現代のロリコンという言葉を再考する上で、刊行当初より読む意義を増している。 本書にフォーカスした新潮文庫、ありがとう!
  • 2025年6月27日
    虐殺のスイッチ
    虐殺する側は残酷で悪辣な人たちなのか? むしろ、善人が集団になった結果、虐殺が起こるのではないか? 地下鉄サリン事件を引き起こしたオウム真理教。彼らのドキュメンタリーを撮影した著者は、オウム信者とされる者たちが善的な振る舞いをすることに驚き、同時に彼らを糾弾する社会が平然と権利侵害を行うことに疑問を抱く。 なぜ虐殺は起きるのか?自身の体験も交えながら、虐殺のメカニズムを追究する。 本書を読むと、伊藤計劃の「虐殺器官」をしばしは想起する。この小説では"虐殺の文法"という人々を戦争に駆り立てる文法が登場するのだが、この本に触れて「そうした文法は本当にあるのではないか?」と納得してしまう。
  • 2025年6月24日
    陰翳礼讃・文章読本
    読書家なら一つは持っている(持っておきたい)であろう「バイブル」。筆者にとって本書こそがバイブルである。 陰翳礼讃、文房具漫談、岡本にて。 これら三編も端正な随筆であるが、本書の目玉はやはり最後の「文章読本」だろう。古典を読む意味、外国語を取り入れる際の注意点など、日本語に向き合った谷崎の卓見が展開される。
  • 2025年6月21日
    戦闘美少女の精神分析
    戦闘美少女の精神分析
    本書が文庫本として刊行されて25年。 戦闘する美少女はさらに増え、美少女が主役のアニメが覇権を争う光景は当たり前の光景となった。 なぜ美少女が戦うのはこうも魅力的なのだろうか?アニメを見る側(オタク)を論じながら、戦闘美少女が生まれる背景を探った一冊。 個人的に紹介したい一文がある。 「『サブカルチャー』は、徹底して表層的であることによって、われわれを魅了し続けるだろう。それは『複雑な人格』は描き得ないかもしれないが、『魅力的な典型』をしばしば産出する。」 サブカルチャーがなぜ魅力的か、なぜ戦闘美少女が生まれるのか、端的に表した文章だと思う。
  • 2025年6月18日
    読書バリアフリーサポート入門ー誰もが読書を楽しめる社会へー
    視覚、聴覚、四肢など、身体に障害のある人が本を読むにはどんな支障があるのか。また、現在そうした支障への対策はどのようなものがあるのか。読書のバリアフリー化に向けた事例をまとめた入門書。 本書を通じて、電子書籍リーダーのデザインはよく考えられていると実感した。本書に書かれてある障害を克服するには、kindleやkoboといった電子書籍リーダーの存在は欠かせない。 紙本派 or 電子書籍派という宗派論争は続いているが、障害という視点から見直してみてほしい。
  • 2025年6月18日
    増補改訂版 スマホ時代の哲学 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険
    スマートフォンの使用によって常に情報と人が繋がれた現代社会。そんな時、哲学に何ができるか問う本書。哲学を小説、アニメなど多様な事例をもとに紐解いていく——と解釈した。 「解釈した」というのは、この本の内容の多彩さにある。読み終えた今でも一言でまとめるのは難しい。「この本はこういう本です!」と歯切れ良く言うのは憚られる状態で、言ってしまえば、もやもやしている。 ただ、本書ではその「もやもやしている」状態=ネガティブケイパビリティが大事だと説いている。なんでも即答できるのが望ましいとされる時代において、あえてモヤるのも乙なものだ。
  • 2025年6月15日
    昏色の都
    昏色の都
    美文に彩られた『昏色の都』 息継ぎをさせぬ疾走感の『極光』 奇っ怪な紹介文『貸本屋うずら堂』 三叉に枝分かれた作風で展開される短・中編集。 昏色の都は現代の純文学において最高峰の文章ではないだろうかという出来映えで、雑誌『文学界』で読んだ時から印象に残っていた。文章に耽溺したいという人に薦めたい。
  • 2025年6月14日
    駅と旅 (創元文芸文庫)
    駅と旅 (創元文芸文庫)
    消えた恋人、夫を追う旅、駅の怨念を追う旅。 何かを追いかける旅を扱った五編のアンソロジー本。 旅の途中で物語の起点となる駅が登場するところがこの本の特徴で、駅と旅物の好相性を実感した。
  • 2025年6月11日
    きりぎりす
    きりぎりす
    画家として成功し、傲慢を膨らませる夫。 その過程を見ていた妻の心中が、手紙のように吐露された短編。 この短編は、もしかしたら人間失格のパラレルワールドかもしれない。人間失格の大庭葉蔵が画家として成功し、家庭を持ったら・・・というifとして読んでいた。 「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも・・・神様みたいないい子でした」(人間失格) 「私は、あなたこそ、その天使だと思っていました。」(きりぎりす) 夫の心を伺うことはできないが、妻が嫌っていた他人に対する賛辞や陰口も、大庭が持ち前のサーヴィス精神でやっていたと考えると、なんだか寂しくなる。
  • 2025年6月10日
    川端康成 三島由紀夫 往復書簡
    川端康成 三島由紀夫 往復書簡
    三島由紀夫といえば、装飾された文体とマッチョイズムの思想で有名な作家だ。 ところが、川端康成と交わした書簡の数々では平易かつお淑やかな印象さえ受ける文章を著している。 驚くべきことに、このプライベートなやり取りで彼は太宰治の「斜陽」を高く評価しているのだ。「見事な芸術的完成が予見されます」とすら書いている。公に太宰を攻撃していた三島由紀夫の姿からは想像もつかない。 この書簡集からは、三島由紀夫というベールに包まれた平岡公威の姿、あるいは平岡公威から三島由紀夫に変貌する過程が示されていると感じた。
  • 2025年6月8日
    消えゆく横丁
    消えゆく横丁
    日々何気なく通り過ぎる横丁という場所。 そこは単なる場所ではなく、一種の文化・風土にまで昇華されている。 そんか横丁が、消えていく。北海道、東京、大阪、静岡など各地の横丁が姿を消している現状を、写真付きで紹介するのが本書「消えゆく横丁」だ。 横丁文化の消滅は本屋の現状に通じると感じた。かつて賑わっていたものが時代を下るにつれ勢いをなくし、人知れず無くなるのは、界隈を超えて共有される問題なのかもしれない。
  • 2025年6月8日
    世界でいちばん幸せな屋上
    ミルリトン探偵局シリーズの第二作目となる本作。 物書きに転身した元探偵の創作過程、 大人になりかける少女の心情、 とあるアルバイト五人組の半生。 何層もの物語が同時に進行しながら、それぞれの物語に結びつく。身近でありながらスケールの大きいストーリーとなっている。
  • 2025年6月5日
    宇宙のあいさつ
    宇宙のあいさつ
    核戦争後の郷愁、宇宙人とのコンタクト、不思議な機械によるコメディ、人と人との駆け引きetc・・・星新一はSFやコメディのアイデアを網羅し、凝縮してショートショートに落とし込む。 どんでん返し的な幕引きが多いが、その終わり方も多種多様。ここが星新一のショートショートの名手たる部分かもしれない。 面白いのは、本全体の構成にもどんでん返しが仕掛けられていることだ。初めて読んだ時、「やられたっ」と思わされる。
  • 2025年6月2日
    英語教育論争史
    英語教育論争史
    英語を始める時期はいつから? 英語教育は会話中心派 or 文法中心派? そもそも英語を学ぶ意味は? 明治から連綿と続く知識人たちによる英語教育論争をまとめた本。 本書を読むと、学校教育で学ぶべきは英語云々というより、翻訳技術全般ではないかと思う。
  • 2025年5月29日
    世界史で学べ!地政学
    2015年に刊行され、2019年に文庫化された本書。 ロシア・ウクライナの関係はこの時から問題視されており、その周辺を取り巻く諸外国の態度も説明されている。 10年前に書かれた国々の様相と、今の国際情勢を見比べるという答え合わせのような読み方ができる。 現代を論じた書籍は10年経てば風化するのが普通だが、本書は今だからこそ輝く内容だろう。
  • 2025年5月24日
    なぜ働いていると本が読めなくなるのか
    「学生時代に教科書を読み込むことは思った以上に重要なのではないか」 本を読み終えた時の感想はこうだった。 というのも、本書では知識を「知りたいこと+ノイズ(知りたいこと以外の事柄)」と定義しており、ノイズこそ重要であると説いているのである。 学校の教科書はノイズの塊と言える。 すぐに必要なのか分からない知識が大量に出てくる。古典や漢文、歴史科目が不要とされるのも、学生たちにとってノイズだからであろう。 だが、だからこそ教科書を読み込めばいろいろな事柄に触れられるのだ。 本書を読んで、「教科書ってよくできた読み物だな」と思わされた。
  • 2025年5月23日
    惑星カザンの桜
    惑星間を移動できるようになった人類は、惑星カザンに調査のための先遺隊を派遣する。しかし、先遺隊からの連絡が途絶え、彼らは消息不明となる。彼らは生きているのか?それを解明するため、主人公たち第二次調査隊は惑星カザンへと赴く・・・。 SFにおける異星人との邂逅では、だいたい衝突によって幕を開ける。しかしこの作品は、不穏なあらすじの割に大きな争いはなく、全体的に穏やかな雰囲気が漂っている。この手の物語では珍しい。 各章のタイトルが上手い。各章のラストを読んだ後、次章のタイトルを読んで展開を察したり、章を読んでからタイトルの意味が分かるなど、読んでいて面白かった。
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