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@bunkobonsuki
文庫本を中心に読んでいます。 アカウント名の読み方は「マイナスおなじマイナス」です。
  • 2025年10月9日
    つながらない勇気 ネット断食3日間のススメ
    「つながらない勇気 ネット断食3日間のススメ」 タイトルだけ見ると、よくあるデジタルデトックス系の本かと考えてしまう。 ところが、この本ではなるデジタルデトックス以上の話が展開される。ネットことばによって書きことばが衰退するという、もっと踏み込んだことを書いている。話の展開としては「日本語が亡びる時」に近い。 現代において、未来において、日本語はどうなるのか。大きな問いに著者が挑む。
  • 2025年10月5日
    鳥類学者 無謀にも恐竜を語る
    特定の動物群を研究する者が、他の動物を語る。そんな本はあまりないだろう。ましてや、語る対象が絶滅しているとすれば、まず本としての企画が成り立たない。 しかし、その困難をすべて乗り越えた奇跡の本がここにある。 『鳥類学者、無謀にも恐竜を語る』である。 本書の内容は、鳥類学者の著者が鳥の知識をもとに恐竜についてアレコレ考察したり空想したりするというものだ。 その流れで恐竜が鳥へ生まれ変わる過程も説明してくれる。「鳥は恐竜の末裔なんだよ」という話を聞いたことはあるが、詳しくは知らないという人は、ぜひ本書を取っていただきたい。
  • 2025年9月28日
    金閣寺
    金閣寺
    三島由紀夫は何者か。 それは、本作における鶴川のような存在なのかもしれない。 『金閣寺』は溝口が生まれ、金閣寺を焼くに至るまでを描いた物語である。溝口の隣には鶴川と柏木という二人の男がいた。二人はそれぞれ陽と陰を象徴するような存在であり、鶴川は(溝口の視点では)一貫して太陽のような存在であった。 鶴川は溝口の陰惨な心を世間へ伝わるように翻訳してくれる。その翻訳はしばしば誤訳に陥るが、だからこそ溝口も彼の陽気を愛していた。 三島由紀夫は、類稀なる筆力と頭脳で現実に起きた金閣寺放火事件を「翻訳」した。それは必ずしも現実を正確に写したものではないけれども、だからこそ我々はこの作品を愛するのであろう。
  • 2025年9月25日
    ゲーテはすべてを言った
    『Love does not confuse everything, but mixes(愛はすべてを混淆せず、渾然となす)——Goethe』 すべてはこの名言から始まった。 ゲーテ研究の第一人者である統一は、ティーカップのタグに書かれていた名言に触れる。 しかし、ゲーテが言ったとされるこの言葉に統一はピンとこない。いったいゲーテはいつどこでこの言葉を発したのか、ゲーテに惚れた男が一次資料を突き止める。 あらすじからは想像もつかないが、本作はアカデミズムの問題をも描いている。 捏造文献を引用した論文が罷り通り、気が付かない学者たち。学者であるがゆえに知らないことを知らないと言えない悲哀。大学って大変だ。
  • 2025年9月15日
    街場の文体論
    神戸女学院大学の教授である著者が、教授人生の最後に行った講義「クリエイティブ・ライティング」全14講をまとめた一冊。 日本論、教育論、外国人論、文学論など多岐にわたる論題を包含する本書だが、私が一際印象深かったのは、本書に登場する「ブリッジ」である。 「ブリッジ」とは、知識を異なる階層に橋渡しすることだという。象牙の塔と市井の人々をリンクさせるような営みは、日本において盛んに行われており、我々が難しい外国の概念を知り、咀嚼できるのもこのおかげである。 まさに、この本そのものが「ブリッジ」ではないか。大学という、知識が集まる場所で教授から学生に共有された内容が、本となって一般層にまでブリッジされている。 私もこの橋渡しの流れに沿って、本書を紹介したい。
  • 2025年9月6日
    小説
    小説
    社会や政治といった現実を論じる大説。 その対となるのは、空想という嘘を語り続ける小説である。「小説」は、まさに「嘘」の意味を提示する物語だ。 文化的資本に恵まれた内海と、文才に溢れた外崎、そして小説家の髭先生。このトリオで物語は進む。途中、髭先生が関わってきた人びとの挿話を経由して、宇宙が膨張するようにスケールは大きくなっていく。 「宇宙が膨張するように」と書いたけど、本当にそんな感じなのである。ながら読みしていると「今別の話をしてる?」と慌ててしまう。 また、この物語はフィクションである。 何を当たり前のことを、と言われるかもしれないが、本作は現実世界だけを舞台にしているのではない。ファンタジーも織り交ぜている。この点で賛否が分かれるだろうが、繰り返すように、この物語はフィクションである。
  • 2025年8月29日
    笑いのカイブツ
    笑いのカイブツ
    雑誌「BANDIT vol.3」にて著者のインタビューがあり、そこから小説を読んだ。この小説は、ハガキ職人に殉じた著者の自伝的小説である。 「好きを仕事にする」とは華々しいイメージが付きまとう。この小説もある意味では「好きを仕事にする」がテーマなのかもしれない。 しかし、笑いのカイブツにおいてそれは呪いとも言える性質を持つ。頭を壁に打ちつけ、人から陰湿な仕打ちを受け、一度手放してもなお、離れることのない「好き」という名のカイブツ。 己の中の怪物を手懐けるという物語は古来より紡がれてきたものだ。まさかそれがノンフィクションであり、しかも隣人のような距離感で存在するとは・・・と考えてしまう。
  • 2025年8月28日
    本の読み方
    本の読み方
    2000年代前半。 日本では「いかに本を速く読み、理解するか」を旨とする速読術が流行っていた。そんな時代において、著者は逆張りとも思える本を刊行する。速読に対抗して、スロー・リーディング(熟読・精読)を打ち出したのだ。 それが本書「本の読み方 スロー・リーディングの実践」である。 現代はまさに大タイパ時代。 本に限らず、あらゆるコンテンツが速読術の対象にさらされ、「いかに娯楽を速く捌くか」という境地に達している。 その中で、あえてゆっくり読むというのは勇気がいることだ。中にはゆっくり読むことしかできない人もいるだろう。だが、本書は遅読を肯定してくれる。私自身もつい先を急いで読んでしまうのだが、本書はあえて暢気に、ゆったり読んだ。
  • 2025年8月24日
    駈込み訴え 太宰治集 (古典名作文庫)
    口述筆記で書かれたことで有名な太宰治の『駆け込み訴え』。本作はタイトル通り、駆け足で、喘ぐように吐き出される文体が特徴。 イエス・キリストを神の子でも聖人でもなく一人の人間として愛したユダの苦しみが、読者の共感を呼ぶ。師の清濁を憎しみ、慈しむ姿勢は、裏切り者と言い切るには酷なほど純情である。 偉大なる師を傍で眺めるという文学作品は、中島敦の『子路』でも見受けられる。孔子と子路の関係は、本作のイエスとユダにそっくりだ。 しかし、ユダが清濁併呑しながらも裏切ったのに対して、子路は孔子へ疑問を投げかけながらも最期まで信じ切った。両作を併読して、師や弟子を比べてみるのも面白い。
  • 2025年8月9日
    ブラフマンの埋葬 (講談社文庫)
    小さな生き物、ブラフマン。 ブラフマンはひょんなことから主人公と出会い、語り手の住む「創作者の家」の一室でこっそり生活する。居候となったブラフマンの、おてんばかつ愛らしい描写が印象に残る、そんな小説。 そんなブラフマンの日々を読む内に、ふとタイトルを思い出す。 ああ、そうだ、この小説は「ブラフマンの埋葬」なのだ。何万文字もの墓碑銘なのだ。
  • 2025年8月5日
    貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」 (幻冬舎新書)
    貧困に関する事柄ついて著していた著者が、脳に障害を負ったことで、かつて取材していた貧困層の人々の思いを再解釈、翻訳した本。 貧困は教育不足、として語られやすい。 しかし本書は、脳機能の異常から来る貧困を論じている。筆者の体験談から「脳に障害を負うと仕事にどんな悪影響が生じて、周りからどう見られるか」が語られる。 この「周りからどう見られるか」がこの本の肝だと個人的に思っている。「アイツはやる気がない」と軽蔑を向けた先には、十二分のやる気がありながらも貧困に喘いでいる人がいる可能性がある。そのことを知れただけでも嬉しい。
  • 2025年8月5日
    NHK出版 学びのきほん 「読む」って、どんなこと?
    教科書で読めない読み方、教科書で読んではいけない読み方、教科書的なはずなのに違う読み方。 学校教育に則った文章読解に、実例を出しながら少しずつ疑念を呈していく。 考えてみれば、文章読解とは不思議なものだ。 数学の教科書に載る定理の文章は、もっとも解釈の余地がない、そのまま読めば理解できるもののはずだ。しかし、それを理解できず「数学は苦手です」という人は後を絶たない。私も苦手である。 正確なはずの文章が、どうして人々に理解されないのか。「読み」は単純ではないということの、自分なりの例を見つけられた気がする。
  • 2025年8月4日
    恋せぬふたり
    恋せぬふたり
    本作は、恋愛感情を持たない男女が、周囲の圧力から逃れるために籍を入れるところから始まる。周囲の「恋愛するのが当然」という無言の了解の残酷さと、それに対抗し、恋愛とは何かを考える物語。 本作のとある登場人物が発する「恋愛というだけで何かしら正当化されてしまう」という主張には、頷いてしまうものがある。
  • 2025年8月1日
    2010年代海外SF傑作選
    2010年代海外SF傑作選
    海外SF小説のワールドカップとも言うべき、とんでもない豪華本を見つけた。 著名のSF作家たちの短・中編を一書にまとめあげた本書。その見所は、各編にある編者の紹介文である。 著者の来歴と本編のあらすじを書いてくれるため、海外SF特有の独特的な専門用語や文化的背景の見えずらさが解消されている。 地味に翻訳側もすごい。 各編で翻訳者は異なるのだが、その中に円城塔がいる。日本のSF作家が海外のSF作品を翻訳するという、かなりレアな体験ができる。 本書はタイトル通り2010年代のSFを集めている。2025年の今、後5年すれば2020年代版の本書が出るのだろうか。
  • 2025年7月28日
    「好き」を言語化する技術
    文章術の本懐を、本書は完璧に実現した! 本書は「推し」を持つ者たちに向けた文章指南本だ。「この愛を周りに広めるにはどうしたら良いか」を文章術に落とし込んでおり、付録としてワークシートが付いている。 文章術系の本そのものは何度も刊行されているし、本書の文章術も既存の類本と多くの共通点を持っている。 だが、読者に熱量を持たせるという点において、本書は同ジャンルの本を突き放している。 文章術本の目的は読者に文章術を実行させることだ。類本が「仕事に使える」「小説家を目指すひとへ」という日常から離れた場面を描くのに対し、本書は「推しを広めるたい」という身近な欲求に根ざしている。 だからこそ、文章術に血肉が通い、読者が持つ熱に薪をくべてくれる。本書がベストセラーと化したところに、いかに人々の表現欲が燻っていたかが見てとれる。
  • 2025年7月25日
    「居場所」のない男、「時間」がない女
    仕事一筋の生き方を強いられ、仕事以外に居場所のない男。 家事・育児・介護などマルチタスクに追われ、時間がない女。 男女間の軋轢の本質を「時空間の歪み」と表現する、異色の社会派エッセイ。 SNSで呟かれる「女・男っていいよな」論は、だいたいこの本によって論駁されるだろう。男女間のいがみ合いがなぜ続くのか、いかに論点の違いによって平行線を辿っているのか、本書を通じてよく分かった。
  • 2025年7月22日
    ユニクロ潜入一年
    SPAでアパレル産業を一変させたとされるユニクロ。 その裏側には、過酷な労働環境で悲鳴を上げる人々がいた。 著者がユニクロの店舗に潜入・勤務し、内部から問題を暴く。 労働における業務効率化は、大抵「一人に負荷を集約させる」の言い換えである。ユニクロの労働環境は、その最たる例といえよう。 ここからはネタバレになってしまうが、終わり方が良い。 潜入・勤務を続けて著者が抱いた思いは、「社長も潜入してはどうか」というもの。社長と敵対していた著者が、最後に見せた提案は、単なる批判を超えて胸にくる言葉となる。
  • 2025年7月20日
    デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義
    2025年7月20日、参議院選挙当日。 投票をした人々に読んでもらいたい本がある。 「デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義」 本書では、アメリカの選挙においてSNS(TwitterやFacebook)における投稿が世論をどう操作しているかを明らかにする。 本書ではアメリカを事例にしているが、日本でも同様のことが起きていると感じる。誰かが言ったことを自覚せずに自分の意見としていることがないだろうか。 もしまた投票する機会があれば、本書を読んで、自分の意見の源はどこから来ているのか考えてもらいたい。それは人間が考えたものではなく、ただそれらしいことを言うボットの意見かもしれない。
  • 2025年7月18日
    ナチュラリスト
    ドリトル先生物語を読み、昆虫少年だった著者。 そんな彼の原体験から始まり、「自然を愛する人=ナチュラリストとはなにか」を探るのが本書である。 タイトルから自然に関連する本だとは思っていたが、いざ読むと中身はある意味で"大自然"だと感じた。 ドリトル先生シリーズの解説・翻訳・聖地巡礼、ナチュラリストとなる過程、生物学におけるアマチュアの存在意義、イギリスの知的分野。これら複雑な話題が渾然一体になっている。 文体もすごい。NHKの「ダーウィンが来た!」のナレーションのような文体から、「私」を主語にした硬派な文体まで、幅広く網羅しているのだ。 自然を語る本は数多く存在するけれども、自然を感じさせる本はそうない。本書はその貴重な一冊だ。
  • 2025年7月14日
    新版 「読み」の整理学
    既知のものを読むアルファ読み、 未知のものを読むベータ読み、 ふたつの読み方に分けた著者は、現代の国語教育がアルファ読みに傾いているとして批評する。「思考の整理学」の著者が送る、読み方の指南書。 この本は読書人の反省として読むことができる。本を読んでいくにつれてジャンルが固定化され、気がつけば同じようなものばかり読んでいる・・という経験は、誰にでもあるだろう。そんな時、ベータ読みという単語を思い出してもらいたい。
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