
海
小川洋子
かつて読んだ
ふと思い出した
再読した
海を渡る供に。
「風薫るウィーンの旅六日間」, 「バタフライ和文タイプ事務所」と掌篇「銀色のかぎ針」がお気に入り。
むかし誰かから聞いた話を読んでいるような錯覚を起こさせる文体、というのは、私が求めているものなんです。ああこれは小川洋子だな、って分かるような特徴や癖などはなくて、歴史的、時間的な積み重ねを経ながら、繰り返しいろんな世代にわたって読み継がれ、誰が書いたかなんてこともだんだん分からなくなって、最後に言葉だけが残る。たとえ本というものが風化して消えていっても、耳の奥で言葉が響いている⋯⋯そんな残り方が、私の理想です。(pp.168-169)




