
読本獣
@GODZILLA2001
2025年5月6日

ビタミンF
重松清
読み終わった
既婚の中年男性が主人公の、家族を描いた短編集。
親や兄弟、時と場所を同じくしてきたけれど、決して一心同体なんかじゃない。互いに互いを生きていて、どこまでも分からない存在。誰よりも近くにいるからこそ、それを信じがたく、また悔しく感じてしまう。
でもしかし、家族ってのは、ただかけがえのないもの、だとも思えない。あれこれ家族の「もしも」を考えながら読むと、胸を掻きむしりたくなった。
それにしても子供に頼られない父親って…皮肉な話だ。
「家庭っていうのは、みんながそこから出ていきたい場所なんだよ。俺はそう思う。みんなが帰りたい場所なんじゃない。逆だよ。どこの家でも、家族のみんな、大なり小なりそこから出ていきたがってるんだ。幸せとか、そういうの関係なくな」(本編より)
「この小説集に描かれているのは、『取り返しのつかなさ』を打開し、修復の完了したあたらしい家族像ではなく、『取り返しのつかなさ』はそのまま変化しないという残酷な事実を認めたうえでなおたたかっていこうとする決意であり、本当にそれを乗り越えられるのだろうかとという大きな不安の姿なのである」(解説より)

