読書猫 "問題のあるレストラン 1 (..." 2025年5月7日

読書猫
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@YYG_3
2025年5月7日
問題のあるレストラン 1 (河出文庫)
(本文抜粋) “「彼とはじめて会った時に結婚の四文字が浮かびました」 「ひらがなで浮かんだんですね」“ ”「お義母さんがどう思ってたのか、わたしなんかにはわからないけど、あなたが思う通り、美談だったのかもしれないけど。でも、でもさ、それ誰かに押しつけた途端、もう美談じゃなくなるんだよ。夫を支えるために一生を捧げた妻のいい話なんて、わたしには呪いの言葉でしかなかった」“ ”「シズル感って言ってね、料理は目で食べるの。食器で味は変わるのよ」 「じゃ、皿に皿載せて食べればいいんじゃないですか?」“ ”「あれ、何してるんですか、座ってますけど。あ、もう限界すか。わたしの知り合い、部屋借りれなくて一泊千六百円のネカフェに暮らしてる人なんすけど、バイト先がワンオペで一日十六時間働いてるんすよ。トイレ行く時間もないって笑ってるんですよ。東京大学さん、偉そうにして、バイト以下じゃないすか。あんた、一生そうなんでしょうね。わたしはこんなもんじゃないって。いやいや、こんなもんですよ、あんた」“ ”「幼稚園の時に、セーラームーン、セーラームーンっていうアニメがありました」 「園庭でよくそのごっこをしてたんですけど、みんなは大体セーラームーンとかセーラーマーキュリーを選んで、わたしはいつも最後まで残ったセーラージュピターで、セーラージュピターのイメージは緑でした。色には順番があったんです。女の子が赤とかピンクとか色分けされたものを分ける時、わたしはいつも緑を選ぶ係でした。選ぶって言うか、選んだふりで残った緑を取るんです。素直に赤とかピンクを選べる人が不思議でした。あなた、人生何回目?って思いました。わたしまだ一回目だから、赤が欲しいって言えない。アニメのセーラームーンは敵と戦ってたけど、女の子たちのごっこのセーラームーンはセーラームーン同士で戦うんです。大人になって、それを別の言葉で知りました。女の敵は女だよ、って。わたしははじめからそこで負けてたから、他の子がファッションとか恋とか選ぶ時、わたしは勉強を選びました。好きじゃないけど、残ってたから勉強を選びました。大学に受かって、友達とか家族とかみんな褒めてくれました。だけどそこにはいつも、女の子なのに変わってるよねってニュアンスが付け加えられてました。会社に入って、やりたいこと頑張ろうって思ってたら、テプラの研修があって、どうしてか女子だけテプラの研修があったんですけど、同期の子が言いました。男は勝てば女に愛されるけど、女は勝ったら男に愛されなくなる。女は勝ち負けとか放棄して、男に選ばれてはじめて勝利するんだ。あれ。じゃわたし、一生勝てないじゃんって思いました。だって緑だもんわたしって思いました。赤もピンクも緑も、全部黒ければいいのに。黒いセーラームーンがいたら良かったのにって……」“
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