読書猫 "問題のあるレストラン 2 (..." 2025年5月8日

読書猫
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@YYG_3
2025年5月8日
問題のあるレストラン 2 (河出文庫)
(本文抜粋) "「傘立てにね、ビニール傘が並んでるの」 「(ん?と)」 「はじめに傘泥棒が来て、そのうちの一本を盗んでさして帰ってしまうの。その後別の人が来て、また傘をさして帰る。でもそれはその人の傘じゃない。その人の傘は盗まれた後だから、その次の人も気付かずに別の傘をさして帰る。その次の人もその次の人も別の傘をさして帰る。そうして最後に来た人にはもう傘が一本も残ってないの。傘を持ってきたのに、濡れて家に帰るの。わたし思うの。二番目三番目に来た人たちはわざとじゃないけど、でもやっぱり傘泥棒なんだよ。知らないうちに盗んでるの。責任があるとは言わない。謝れとは言わない。でもその傘が自分のものかどうか、もう一度確かめるべきだと思う。濡れて帰った人のことを想像すべきだと思う」 「俺が、何番目かの傘泥棒だって言いたいのか?」 「あなただけじゃない。みんなそう。わたしだってそう」" "「復讐って、怒るだけじゃ出来ない。ちゃんと楽しく綺麗に生きることも復讐になる。田中は楽しく綺麗に生きることを目指しなさい。わたしは怒る方をやる」" "「誰だって過去の忌まわしい出来事から逃げてることはある。逃げていいと思うんだよ。一生逃げ切れるなら。だけど時々、過去に追い付かれることがある。それは明日かもしれないし、十年先かもしれない。だったらね、立ち向かう手もある。それは考え方」" "「負けたら辞めるって言ったの嘘です。辞めたいのは諦めが足りないからです。諦めたくせに期待しちゃってるからです。わたしの諦める気持ち頑張れわたしの絶望頑張れって思っても、期待するの止められないです。(苦笑し)それが苦しいだけです」" "「逆だと思う。五月は人を憎んだりしながら生きていくのが嫌なんだと思う。許せないって思う自分が許せない。忘れたいって思うから忘れられない。苦しんじゃいけないって思うから苦しい。消えて欲しいって思えば思うほど、自分自身が消えたくなる。そんな自分、嫌だと思う。このままじゃ五月は一生そんな思いを抱えたまま生きていくことになる。五月は争うために裁判するんじゃないと思う。五月はそんな思いを捨てにいくんだよ」 「五月が今一番したいのは、心から笑うことだと思う」" "「いや、わかんないんだけど、俺、小学校の時の友達で、すぐ人を殴る奴がいて、そいつ、あっくんって言ったんだけど、みんなから嫌われてて、俺はあっくんの最後の友達だったんだけど、もうこっち来んなって言って、俺も結局友達やめたんだよ、そしたら夏休みの間にあっくん病院に運ばれたんだ。お父さんにお腹蹴られて。小さい時からずっとそういうの続いてたんだって。あっくんはもう学校来なくなった。退院したのかも俺らは教えて貰えなかった。この間さ、おまえ、傘泥棒の話してたろ? あの後、あっくんのこと思い出したんだよ。あ、そうか、俺もあっくんのお腹を蹴ったんだって思った。もうこっち来んなって言った時、俺も蹴ってたんだって」" "「あなたがこの部屋を出てすぐに忘れてしまった時間は、彼女にとっての一生でした。あなたにとっての小さな悪戯は、彼女の思い出も夢も壊しました。お願いします。彼女の顔を思い出してください」" "「わたしは君に何もしてあげられません」 きょとんとしている周太郎。 「その代わりに、わたしが教わったことがあるので、それを教えます。三つあります」 千佳、指を一本出して。 「人に優しくすると自分に優しくなれます」 千佳、指を二本出して。 「人のことがわかると自分のことがわかります」 千佳、指を三本出して。 「人の笑顔を好きになると自分も笑顔になれます」 千佳、微笑んで周太郎を見つめて。 「自分は自分で作るの。じゃあね。大人になったらまた会おうね」" "「(薄く微笑んで)奇跡起きなかったですね」 「(微笑み)起こりましたよ。ちゃんと今日まで営業出来たじゃないですか。奇跡は起こりすぎてて気付かないだけです。奇跡はその日一日一日、その一秒一秒のことです。わたしは毎日みんなの顔を見ながら、感じてました。今日をちゃんと生きれば明日は来ます」"
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