柿内正午 "社会秩序とその変化についての..." 2025年5月8日

社会秩序とその変化についての哲学
“消費は生産に先立つ。「動かざる者、食うべからず」という言葉があるが、幼少期から長く食べつづけてきた人しか働きはじめることはできず、その後も日々の消費によって肉体を維持しなければ、働きつづけられない。他方、消費されるもののほとんどは、先立って生産され、交換を経て手元にやってきたものである。すると、生産こそが消費に先立つとも捉えうる。そのとき考慮すべきは、消費を人に代行してもらうことはできないが、生産は代行可能だという点である。誰かの生産は〈私〉の消費に先立つかもしれないが、〈私〉の消費はかならず〈私〉 の生産に先立つ。 逆に言えば、人のために消費することはできないが、人のための生産ならできる。だが、人のためにだとして も、誰のためにでも生産するわけではない。この事実が本章の出発点になる。代行がなされる範囲のことを共同性の範囲と呼ぶこと、これが可能だと言えるからだ。本書において、共同性とは共に生きる人間集団にみられる性質と捉える。共同体において人びとは、必要事を互いに代行し合うことによって共に生きているものとイメージすることができる。”p.28-29
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