
Wi-HEi
@Wi-HEi
2025年5月8日

終の住処
磯崎憲一郎
読み終わった
@ 自宅
時は重なり合う。現在と過去、そして未来を複層的に現実世界へ投影する。
時は拡大収縮を繰り返す。十数年の間が広がっても、まるで何事もなかったかのようにぎゅっと縮んで一続きになる。
妻に隠れて浮気する、製薬会社勤めの男。そんな彼の記憶は、営業と接待の日々、上司の罵声、家計のやりくり、赤ん坊の夜泣き、不倫関係、妻とのすれちがうばかりの生活といったもので埋められている。
彼にとって、それらは、「とうてい重要とは思えないようなもの」である。
だが、終の住処に行き着く時、人生や生活はそれらによってかろうじて存続されていることにふと気付くのだった。
