
なし
@nashi
2025年4月23日

流しのしたの骨
江國香織
読み終わった
また読みたい
心に残る一節
感想
私たちの母は、昔からずっと、朝父を送り出すと化粧をし、夕方父が帰ると化粧を落として出迎えた。(pp.5)
はじまりを読んだ瞬間にとても好きだなって思えた本。
この一文から始まる一家の物語は、化粧は別にいつしても良いものであり、出かける時にするものという価値観に当てはまらない。
この「普通」という枠を飛び出してきたのがこの小説。
家族のひとりが離婚する時の母の描写の
(···いい人なのにねぇ、と、母は同じことを、繰り返して言った。てもそれは、すでに過去の人に対するような物言いだった。たとえば新聞の死亡欄をみて、あら、いい役者だったのにねぇ、という時のような。(pp.186))や、学校で呼び出しをくらった弟のことを庇う箇所も。
普通ってなに?個性で片付けていい話だよね?と社会に問うこともできるし、家族の日常をちらっとのぞき見している感覚にもなれる。そんなすてきな作品でした。

