eye "噂の女" 2025年5月9日

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@ulala_
2025年5月9日
噂の女
噂の女
奥田英朗
久しぶりに仕事関係の人とランチすることになった。 その日は珍しく土砂降りの雨。待ち合わせのお店は駅から10分ほど歩く場所で、時間きっかりに行ったら、満員で入れなかった。 約束した人は15分くらい遅れて来た。 なんだかいろいろとモヤモヤしたので、帰りに図書館に寄ることにした。 このぬるっとしたモヤモヤがすっきりするような何か…と探していたら奥田英朗が目についた。 そういえば昔好きでいくつか読んだな、と思い出して、読んだことのないこの本を借りることにした。 正直、すっきりどころかイライラが増してしまった。忘れていたけど、それが奥田英朗だ。 狭い田舎の街で、一人の女について、さまざまな登場人物が語ったり思ったりするのだけど、それがどれもこれも軽蔑や悪意や嫌悪に満ちている。 とはいえこの女も相当で、ここには描かれていない近い未来の姿が容易に想像できる、というかそれを想像させるための物語だった。 最初わたしはこの女の方に肩入れをして読み進めていた。それくらい、みんなの噂話がゲスいのだ。 「あ、この小説って、そういうことか」と気づいたのは最後から2〜3編目あたりで、それに気づいた途端、この小説を超えた時空で、それが起こった時の彼ら彼女らの行動・言動が簡単に頭の中でリアルに動き出す。 気分は晴れなかったし、むしろどんよりとした気持ちにはなったけど、よく取材ができた女性誌のゴシップ記事をくまなく読んだような、変な充実感だった。
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