komon
@komon
2025年5月11日

極楽とんぼ 他一篇
里見トン
読み終わった
知人に勧められ借りて読んだ。
久しぶりの実物の本、さらに純然たる小説でとても印象に残った。明治後年ころ?から震災〜戦後あたりまでが舞台だと思うが、登場人物が生き生きとしていて主人公の捉えどころのなさが特にはっきり浮かび上がってくる。語り口は独特の癖?というか読者に「喋りかけてくる」部分も多く、読んでいる最中は気になるのだが読み終えてみると語り口の印象が消えて物語や登場人物の方がくっきりとしてくるから不思議だ。
表題『極楽とんぼ』もよかったが併録の『かね』もとてもよかった。出口のないように思えた男の人生がちょっとしたことから(敷かれていたと思われる)レールから外れて思いがけない方向に進む。その先に出口があったかはわからないが、その方向でしか出会わなかったであろう人物たちの中に強い印象を残している主人公常吉(偽名)……。「ちゅねー。」
岡本綺堂『鰻に呪われた男』を思い出した。