
イイヤン
@h_d_d
2025年5月16日

国を蹴った男 下
伊東潤,
幾花にいろ
読み終わった
工房を追い出され行き場のなかった蹴鞠職人の男が、蹴鞠にしか興味ない殿様に召し抱えられる話。
もともと工房を追い出されたのは、親方が引退して主人公が次の代表になるはずだったのに、親方がボンクラの息子を後継ぎに指名してしまったから。腕のいい職人の集まった工房が、無能の後継のせいで終わってしまったことに諸行無常を感じずにはいられない主人公。お殿様は蹴鞠好きなので職人を気に入ってくれるが、政治にまったく興味がなく、国はどんどん傾いていく。あのボンクラ後継とお殿様の姿が主人公の中でダブってくる。けれど主人公は蹴鞠さえ作れればそれでいい。そしてお殿様の蹴鞠が好きという気持ちに偽りはない。
大切なことの前では、それ以外のことなど些事という生き方。どこまでそれを貫けるか。
美しいフォームで蹴られた蹴鞠が、吸い込まれるように空に飛んでいく。ほかの何にも替えられないその景色を、いつまでもいつまでも眺めていられたら。
