
芯波
@shinba
2025年5月17日

ミネハハ
フランク・ヴェデキント,
市川実和子
読み終わった
彼女への思いは、モルニを夢みたあの気持ちに似ていた。わたしは彼女から目が離せなかった。しかし、わたしは実際に彼女の姿をこの目で見ていたのだろうか。あの衝撃と官能は、幻だったのではないかとさえ思えてくる。まだ世界が通り過ぎゆくことに無意識だった七歳という幼さで、どうしたらあんなにも強く感じることができたのだろう。その感動を今のわたしには書き表すことができない。もうあのように感じることはないのだから。あの瞬間の感情こそが情熱のすべてだった。そしてそれは子どもではなくなったときに、同時に終わってしまったのだ。わたしは、視力を失ってしまったようにさえ感じている・あの瞬間に、人間の美しさのすべてを知ってしまったから、もうなにも特別なこととは思えなくなってしまったのだろうか。わたしには、わからない。(p.42)