monami "いばらひめ<新版>" 2025年5月19日

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2025年5月19日
いばらひめ<新版>
いばらひめ<新版>
エロール・ル・カイン,
矢川澄子
シンプルだからこそツッコミどころが多いこの物語。 金のさらが12まいしかないからと仙女をひとりだけ仲間外れにしたり、たまたま100年の目覚めのタイミングに居合わせた王子が眠る姫に勝手にキスをして目を覚まさせたり。 文字通りに受け取ってしまえば変わった物語だが、だからこそ想像の膨らましがいがある。 皿を言い訳に、娘から悪い人間だけを遠ざけようとした親の身勝手は、子への愛が裏目に出たとも言えるだろう。さらには呪いの元凶だからとつむをのこらず焼き捨てまでしたのに、それは結果的に娘の好奇心につながっている。親なら誰もが味わう可能性のある悲劇たち。 そして、ちょうど城の百年の眠りからの目覚めに居合わせた王子は、かつて何人もの挑戦者を殺してきた「いばら」にすんなり道を譲られる。なんとタイミングの良いことか。しかし、キスで目覚めたいばらひめは、王子をしんからなつかしそうに見つめている。 ということは、ふたりは百年前に出会っていた可能性もあるのではないか? もちろん夢で会ったというのも素敵。でも前世での身分違いの恋?それとも王子はもともと人間ですらなかった?ふたりには百年の時がどうしても必要で、人間に生まれ変わった王子との奇跡の恋がいま叶ったのではないか? 百年の時を経て、愛しい人からの目覚めのキスで起きるお姫様は、いったいどんなに素晴らしい気分だろう? そんなロマンチックな妄想も、この物語だからこそ無限大の可能性に満ちている。
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