"耳たぷ" 2025年5月27日

游
@01too
2025年5月27日
耳たぷ
耳たぷ
福徳秀介
『「しっくりくるといつまでも覚えていて、しっくりこないとすぐ忘れちゃうのかな」「そうかもな」僕は、黄信号と満月のあの言葉にしっくりきていた。言葉はきっと、発した人によって威力や意味合いが変わる。』p5 ーこの一文を読み、頭に次々と私のために私だけのためにかけられた言葉たちがだいすきな人たちの声で再生された。その言葉ーその手が前からだと握手で、横からだと繋ぐ、みたいな。なにを言われたか、だれに言われたか。 忘れられないあの人は、私にとってしっくりきていたのかな。 『「お前と出会った日、楽しすぎたんだ。幸せすぎたんだ。この人と一緒にいられたら、毎十秒が永遠に楽しいって思ったんだ。でも、この十年、あの日を超える日はなかった」「え?私もだよ」』p20 ー出会うことが一番むずかしくて、一番尊い。出会ってくれてありがとう。出会えてよかった。 『「不満はいくらあってもいいんだよ。人と人なんだから。理解しあえばいい。どうせどこかに出口があるし。でもね、恨みは絶対にあったらダメなんだよ。恨みに出口はないからね」』p21 ー最近、不可共感性について考えていたところにこの一文。所詮、人は自分が大切で、すべての価値観が合う人なんていない。それを分かったうえであとは「恨み」の有無。 『「正義を貫くうえで、誰かを傷つけているようでは、それは正義ではないね」』p53 ーこの世界は正義と正義のぶつかり合いで、どちらも本物でどちらも正しい。そんなことに気づいたのは大人になってからだったが、やっぱり誰も傷つかない正義と、誰も傷つかない嘘がやさしい。 『頭の中は自由で、都合の良いことだけを考えればいい。しかし人間というものはわざわざ負を想像する。それは、我に返ったとき、現実世界の方がマシだと思わせるため。現実を受け止めるための防衛本能。現実と想像の対比。p104 『恒例行動が増えていくことは、思い出の数が増えるというロマンチックなことだった。』p107 ー仲が深まるにつれて「いつもの」がお互いの中に生まれる瞬間が好き。自分たちにしかわからない共通言語で私たちだけの世界になれる瞬間が好き。ついつい「これは私たちの歌だね」と思い出を増やそうとしてしまう私は世界一のロマンチスト。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 全体としての読後感は、「少女漫画を読んだあとみたいな甘酸っぱさ」だった。あまりにもピュアででもリアルで思い返すとちょっと自分のことが恥ずかしくなるような心の動きと恋したときならではの思考回路、行動が繊細にかつ分かりやすく表現されている。 誰かのおかげで変われた自分。飲食店で待つのが好きになったし、夜の散歩が好きになった。缶コーヒーを飲むようになったし、高速道路のSAが好きになった。知らぬ間に影響されていて、会わなくなってもなお自分の中で生き続ける。一緒に生きている。そんなことに気づかせてくれた。 好きでなくなってもなお、続く関係はあるけど、嫌いになると人びとは離ればなれになる。好きとは曖昧で、恋愛とは想像力だ。
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