
読書日和
@miou-books
2025年5月28日

旅人の食
山本志乃
読み終わった
江戸後期~昭和初期頃までの旅を記録した書籍などをもとに食とその風景がつづられた本。1つ1つの旅に対する、著者からのコメントは少ないのだけれど、紹介している件数が多い!なんと21件。
3パートに分かれていて、最初のパートは遊山や紀行。中でも江戸後期の庶民たちの旅に出たいパワーが面白い。この時代にはしのび旅(通行手形を持たない「抜け参り」)がすでに大衆にも広がっていて、ひどいところでは街道稼ぎにすらなっていたと聞くから驚き。関所って今の入管より厳しいイメージだったのに意外・・・。とはいえ、抜けルートはなかなかの山道なのに、そこを嬉々として登っていく50過ぎの女性のパワーよ!5か月もかけて友達と遊びに行くって、羨ましいやらなんやら。この頃に持ち歩いた非常食、「乾飯(かれいい)」もまた素晴らしい。黄色に染めて小判型にしちゃう江戸時代の商人のたくましさもいい。
2パート目は放浪と冒険。
ここのパートも女性の逞しさが好ましい。明治28年8月に富士山山頂に私費で観測小屋を建てた野中夫妻。奥さん、なんとこの時代に2歳の乳飲み子を東京から福岡の実家まで列車と船乗り継いで預けにいって、取って返して自分も富士山頂まで登頂して82日間の観測に(体力の限界まで)。奥さん(千代子さん)の書いた『芙蓉日記』が俄然気になる。
3パート目は異国メイン。
旅がしたかったわけじゃないけど、漂流して結果旅になってしまった人、
そしてここでも明治の女性の強さを知る。南蒙古カラチン王府って初めて聞くけど、人類学者夫婦の活躍が好ましくて。
山本志乃さんの他の書籍も読みたくなる、充実の一冊でした。

