
ユメ
@yumeticmode
2025年5月26日

楽園ジューシー(1)
坂木司
読み終わった
感想
小・中・高とずっといじめられており、大学生になった今では自分の人生を余生だと思っているザッくん。そんな彼が、大学の春休みを利用して沖縄の「ホテルジューシー」でバイトをすることになる。あらすじから、沖縄の空気で主人公の傷ついた自己が再生してゆく温かな物語だと安易に想像していたが、実際はもっとほろ苦いお話だった。
いじめられていた頃の貴重な友達から突きつけられた厳しいメールには、ザッくんの心境を思うとこちらも辛くなる。だが、ザッくんが余生ではなく「今」を生きるべく成長してゆくためには、必要な言葉だったのだと思いたい。苦い思い出もたくさんできた沖縄に「また必ず行こう」と思えただけでも、彼はきっと変わり始めているはずだ。
沖縄は家父長制がきついという話(独身女性はお墓に入れないというのには本当に驚いた)には、色々考えさせられた。ザッくんが男性であるがゆえにそれまで家父長制を意識せずに済んでいたように、私にもマジョリティであるがゆえに気付けていない差別があるはずだ。そのことには自覚的でありたい。

