
Takaki Yamamoto
@yama_taka
2025年6月8日

村上春樹 翻訳ライブラリー ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集
スコット・フィッツジェラルド,
村上春樹
読み終わった
若くして作家として華々しくデビューし、『グレート・ギャツビー』という不朽の名作を残したフィッツジェラルドは、1930年代に入ると、妻の病や世界恐慌、自身のアルコール中毒などで、不遇の時代を過ごすようになる。すべてを賭けた渾身の力作『夜はやさし』も、発表当初はほぼ見向きもされなかった。この短編集では、その頃の彼の心情を、いくばくか読み取ることができる。短編も秀逸だが、後半に収録された「私の失われた都市」や「壊れる」三部作などのエッセイが、寂しくも美しい。
「そして魂の漆黒の暗闇にあっては、来る日も来る日も時刻は常に午前三時なのだ。」
自身の絶望を、こんな言葉で綴ることができる人を、僕はほかに知らない。
