

Takaki Yamamoto
@yama_taka
著述家・編集者・写真家の山本高樹です。『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』で第6回「斎藤茂太賞」受賞。最新刊『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』。東京・西荻窪在住。
- 2025年8月22日天路の旅人(下)沢木耕太郎読み始めた
- 2025年8月22日
- 2025年7月31日天路の旅人(上)沢木耕太郎読み始めた
- 2025年7月28日台湾漫遊鉄道のふたり三浦裕子,楊双子読み終わった大食らいで奔放な日本人作家、千鶴子と、完璧で謎めいた台湾人通訳、千鶴の、一年にわたる昭和初期の台湾での日々。二人の会話を主体にした文体は、ラノベを思わせる軽やかな語り口だが、随所に当時の台湾の生活文化が緻密に描かれていて、特に台湾各地の食べ物の描写は、読んでいて本当におなかが空く(笑)。 統治する側とされる側の越えられない溝、ひたひたと迫り来る戦争、当時の女性たちの不遇な立場など、物語の根底にあるテーマはずしりと重いが、それらはある意味、今のような時代にこそ、あらためて考えてみるべきテーマでもある。 台湾を再訪する前にこの本を読むことができて、よかった。
- 2025年7月23日台湾漫遊鉄道のふたり三浦裕子,楊双子読み始めた
- 2025年7月22日複眼人 (角川文庫)呉明益,小栗山智読み終わった序盤で語られるワヨワヨ島のファンタジックな設定が興味深くて、物語にどう関わってくるのかと思っていたのだが、何というか、壮大なスケールに膨らんだ話を、上手く畳み切れなかった印象。まったく予想のつかない展開は面白かったし、明示と暗示を含め、自然と人との関わりについてのさまざまな示唆に富んでもいたけれど。
- 2025年7月3日火明かり ゲド戦記別冊アーシュラ・K.ル=グウィン,井上里,室住信子,山田和子,清水真砂子,青木由紀子読み終わった岩波書店の『ゲド戦記』シリーズの最終巻として刊行された一冊。外伝にあたる短編『オドレンの娘』は、誰が正で誰が邪か、何が真実だったのか、わかりそうでわからないままに終わる物語で、いかにも後期のル・グウィンらしい作品。そして、ル・グウィンの死後に発表されたという表題作は……ゲドがついに迎えた最期の夜を、これ以上ないほど穏やかに、鮮やかに描いている。凄い作家だ……。完璧なエピローグを遺してくれたことに、感謝したい。
- 2025年6月29日火明かり ゲド戦記別冊アーシュラ・K.ル=グウィン,井上里,室住信子,山田和子,清水真砂子,青木由紀子読み始めた
- 2025年6月28日ドライブイン探訪橋本倫史読み終わった日本各地のドライブインをくまなく何度も訪れ、店主の方々から聞いた話を虚心坦懐に書き綴った本。膨大な時間と手間をかけた取材の成果が凝縮されている。 橋本さん自身はあとがきで「文章にまとめる上で心がけたのは、表現しないということだった」と書いているが、謙虚なスタンスで綴られる言葉の端々からごくうっすらと滲み出る橋本さんの熱意は、読んでいて確かに感じられたし、その気配に心を動かされた。
- 2025年6月16日ドライブイン探訪橋本倫史読み始めた
- 2025年6月15日2024年の本部町営市場橋本倫史読み終わった明治時代の終わり頃に発祥し、戦後の闇市を経て、現在の建物になってからも50年以上の歴史を持つ、沖縄の本部町営市場。その市場の建物が、耐震強度不足などを理由に取り壊されるという方針が突然発表された。さまざまな思いを持ちながらも困惑する、市場に店を持つ人々。そうした23人の人々の声をまとめ、急遽出版されたのがこの本だ。当事者の方々の切実な思いとともに、本部町営市場という場の持つ魅力そのものも、それぞれの方々の視点から伝わってくる。 自分も、いつかまた沖縄に行く機会があれば、この町営市場を訪ねてみたい、と素直に思った。それまで、市場自体が少しでも良い形で存続してくれているといいのだが。
- 2025年6月9日2024年の本部町営市場橋本倫史読み始めた
- 2025年6月8日村上春樹 翻訳ライブラリー ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集スコット・フィッツジェラルド,村上春樹読み終わった若くして作家として華々しくデビューし、『グレート・ギャツビー』という不朽の名作を残したフィッツジェラルドは、1930年代に入ると、妻の病や世界恐慌、自身のアルコール中毒などで、不遇の時代を過ごすようになる。すべてを賭けた渾身の力作『夜はやさし』も、発表当初はほぼ見向きもされなかった。この短編集では、その頃の彼の心情を、いくばくか読み取ることができる。短編も秀逸だが、後半に収録された「私の失われた都市」や「壊れる」三部作などのエッセイが、寂しくも美しい。 「そして魂の漆黒の暗闇にあっては、来る日も来る日も時刻は常に午前三時なのだ。」 自身の絶望を、こんな言葉で綴ることができる人を、僕はほかに知らない。
- 2025年6月1日観光地ぶらり橋本倫史読み終わった道後温泉、竹富島、羅臼、しまなみ街道、五島列島、そして著者の故郷である広島など、日本各地の「観光地」について書かれた本。土地の歴史を調べる、現地に足を運ぶ、自分の目で確認する、現地の人々に話を聞く。紀行文でもあり、「観光」を糸口に日本の近現代史を地方の視点から辿ったルポルタージュでもある。 変に斜に構えたようなところのまったくない、その土地の人々に敬意を持ってまっすぐに向き合う著者の姿勢に、とても共感できた。
- 2025年5月21日観光地ぶらり橋本倫史読み始めた
- 2025年5月16日村上春樹 翻訳ライブラリー ある作家の夕刻 フィッツジェラルド後期作品集スコット・フィッツジェラルド,村上春樹読み始めた
- 2025年5月15日彼女の思い出/逆さまの森J・D・サリンジャー,金原瑞人読み終わったグラース家の物語でもコールフィールド家の物語でもない、サリンジャーの初期の短編集。明らかに軽めに書かれた作品もあるが、彼ならではの先見性と繊細な感性、そして語り口の巧みさを堪能できる一冊になっている。特に、彼自身の実体験が反映されているとも言われている表題作には、心を打たれた。
- 2025年5月14日複眼人 (角川文庫)呉明益,小栗山智読み始めた
- 2025年5月9日ゴンべの森へ星野道夫読み終わったチンパンジーの研究と保護に取り組むジェーン・グドール博士とともに、星野さんがタンザニアのゴンベ動物保護区を訪れた、十日間の短い旅の記録。星野さんが撮る写真は、チンパンジーも、現地の人々も、そしてジェーン・グドール博士に対しても、さりげなく、穏やかなまなざしで捉えられている。 〝私たちはある風景に魅かれ、特別な想いを持ち、時にはその一生すら賭けてしまう。〟 星野さんにとってアラスカが、ジェーン・グドール博士にとってゴンベの森がそうであったように、僕にとってのラダックも、そういう場所だったのだと思う。
- 2025年5月8日彼女の思い出/逆さまの森J・D・サリンジャー,金原瑞人読み始めた
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