
霧
@yoruto
2025年6月9日

楽園 上
宮部みゆき
読み終わった
借りてきた
『模倣犯』から9年後の続編。
本文p285より、抜粋。
その絵画教室は、彼女の大学の指導教授が自宅で開いていたものだった。生徒は大人と子供が半々。子供を教える方が楽しかったし、刺激があったという。
「わたしの先生は、中高生にそういう凄い両親の肖像を描かせて、こう言うんです。この絵をずっととっておきなさい。これが、あなた方の若い魂が今現在認識している世界の姿です。そして、いつかこの絵を一抹の含羞と深い愛情を持って眺められるような大人になりなさい」
慈子は微笑んで、尋ねた。「画家になるならないとは関係なしに?」
花田先生も微笑んでうなずいた。「はい。人は誰でも絵を描きながら生きていますから。たとえ絵筆は持たなくても」
それもまた、慈子が今まで思ってもみなかったことだった。人は誰でも己の絵を描いている。
