いっぴきたぬき "アナーキズム" 2025年6月10日

アナーキズム
書名のイメージに反して、これはアナーキズムの「概説書」ではない。例えば、代表的なアナーキストであるバクーニンやクロポトキン等については主だっては論じられていない。むしろ、アナーキズムを理論的・思想史的に一貫した潮流として概説することの困難さが本書の大前提としてある。(例えば、左派なのか右派なのか、革命に肯定的か懐疑的か、等を一概に決することができない。) 主に18世紀末から19世紀前半のアナーキストや社会主義者のそれぞれの著作と背景事情を丹念に検討し、解きほぐして「アナーキズム的モメント」を引き出し、現代の自由主義や民主主義への示唆を考える。特に重要だと思ったのが、「政治」とは異なる「社会」の次元の出現が19世紀の革命を18世紀のそれとを分つ特徴で、それがアナーキズム周辺にも決定的だという点である。私は、「政治的権威の正統性」という論点の裏返しでアナーキズムに興味を持ち本書を手に取ったが、むしろ産業化や貧困の観点を持たずにこの思想を語ることが片手落ちであると知ることとなった。 ゴドウィンもシュティルナーもプルードンもタッカーも(なんならマルクスも)ほぼ全く知らない自分でも通読することはできた(消化できているとはとても思えないが)ので、骨太な専門書だが難解すぎるものではないと思う。色々学んでから、再度読み返したい。
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