
ハム
@unia
2025年6月14日

和の思想
長谷川櫂
読み終わった
〈皿の上の一切れのカステラが和とは何か、日本とは何かという大きな問いを投げかけている。〉
こういう問いの立て方はセンスあっていいなと思う。
和菓子、和服、和食、どれをとっても起源を辿れば外からのもの。
和の歴史を紐解くともともと蔑称の倭を誇りを持って和としたのに、明治維新の流れの西洋化を通して自虐の和を使う皮肉。
そのあたりを谷崎の「陰翳礼讃」から考えるのはなるほどと思う。
〈「徒然草」の「夏を旨とすべし」という一文は日本人の生活と文化すべてに及ぶ鉄則なのではないか。〉
これがおもしろい。
漢詩が崩されて書かれるのも、漢字からひらがな、カタカナが生まれたのも、「間」の文化が生まれたのも日本の蒸し暑さによるもの。
確かにぎゅーぎゅーの漢字だけでは暑苦しい、余白のない絵画だけでも暑苦しい、ハグやキスの挨拶しかないのも暑苦しい。
ここからわかるのは、日本には受容、選択、変容というダイナミズムがあり、こうした創造的運動体こそが和であると。
さまざまな異質のもの、対立し合うものを和ませ、なじませる和の創造力。
著者は俳人であるため俳句と結びつけて語られるのも良かった。
和というフィルターを通して世界を見ることは今の時代においてけっこうクリティカルなんじゃないかと本気で思う。



