

ハム
@unia
読んでいて特に印象に残った語りたい作品をピックアップ。
- 2025年10月10日ユーカラおとめ泉ゆたか読み終わった金田一京助がかなり嫌なやつに描かれていた。 時代的なこともあるけど本人にはさほど悪気がないのがまたなんとも… 女性に対して、アイヌに対して、今の時代ではアウトな態度がどこまで本当かはわからないけど当時の認識としてあのようことが多くあったことは事実だし、それが知里幸恵にとってモチベーションにも負担にもなっていたのかなと思う。 時代のひと言で済まされてしまいがちだけど、もう少しうまいやり方があったのではないかと思ってしまう。 知里幸恵という人の生涯があまりにも軽んじられているように思えてしかたかない。 彼女が命をかけて成しえたものが語り継がれて評価されているのがせめてもの救い。 普段マジョリティに属していたり、日本みたいな「誇り」という概念に控えめな国にいるからこそ彼女のような自分を犠牲にしてまでアイヌを守ろうとする意志に強い印象を覚え、心を動かされるのかなと思いました。
- 2025年10月8日大谷翔平の社会学内野宗治読み終わった大谷翔平のことというより大谷翔平から透けて見える社会についての本で、けっこう社会学してておもしろかった。 日本という国が閉鎖的なことが改めて浮き彫りになった。 バースの記録阻止、バレンティン差し置いての村上宗隆の記録賛辞とか昔から今に至るまで変わらない部分があるのは残念。 野茂英雄がドジャース入団の経緯、きちんと知らなかった。売国奴とまで言われての掌返し、日本っぽいな。 田澤ルールなんてのもあったな。 日本の政治や経済が停滞しているほどスポーツに向かう力が強まり優秀な選手が出てくるなんていう指摘もおもしろい。 NPBや日本のメディアの問題点を大谷翔平を通して語ることでスッキリ理解できた。 良くも悪くも稀代のアイコンとして大谷翔平を消費している日本の闇が垣間見えた。
- 2025年10月3日性と芸術会田誠読み終わったキャンセルカルチャーに見舞われた会田誠が自身の作品について解説しているのだけど、芸術家が言葉で表現しなきゃならないというなんて野暮な社会なのだろう。 でも芸術への向き合い方って義務教育でもあまり踏み込まないし、積極的に学んでいかないと理解しにくい側面があるから感性だけで芸術家の表現を受け止めきれないのはけっこうな頻度で起きてしまっている気がする。 〈私は芸術というものは「一つのメッセージを伝える容器」という役割をなるべく拒絶すべきだと考えている。〉 〈芸術はそういった一般的な言語・思考の空間と同じ次元にあるべきではない。それでは「わざわざ芸術をやる意味」がなくなってしまう。 私は芸術は究極的には何も主張しないと思っている。芸術はナンセンスを、意味の絶対零度を目指す。〉 この本を読むと彼の作品の意図や彼自身が思うところの芸術の意味をしっかり体現していることがよくわかるし、読んだうえで作品を見ると確かな納得感もあって、会田誠の芸術家としての評価も頷けると思う。 でも芸術にふだんあまり馴染みのない人が彼の「犬」を見たら、特にフェミニストたちが怒るのもわからんでもないけど、不一致や不和を生むという視点を見落としてるから話が平行線なんだろう。 議論も織り込み済みな芸術を提示しているのだけど、万人が納得するのは無理ということがまた芸術が存在する下地でもある気がする。 ニーチェ、ランシエール、松岡正剛、永井玲衣、など最近に読んだ人たちの思想との親和性があって思考が深まる読書でした。
- 2025年9月26日熊になったわたし 人類学者、シベリアで世界の狭間に生きるナスターシャ・マルタン,大石侑香,高野優読み終わった人間主体で物事を考えすぎるのは文明化した時代にはなかなか避けられないからこそこういった人類学ベースの知見が大事なのだと思う。 熊と人が混じっているとか、つながっているとか正直なところよくわからないんだけれど、著者自身もそれらをわからないまま悩み、模索し、人類学的な方法論で向き合っていく過程は読み物としてもおもしろい。 自分のなかに熊が同居する人はなかなかいないだろうけど、個人のアイデンティティは程度の差こそあれさまざまなものが混じることで作られていくことを考えると、自分であっても自分という人間についてはわからないことのほうが多いのかも。 フィールドワークしている文化に根ざした価値観の反映があれど熊に噛まれたことをトラウマにせず向き合う著者の胆力には驚く。 いろいろ揺さぶってくれた。
- 2025年9月24日月魄の楽響 -Fêtes galantes-: ヴェルレーヌ詩集ポール・ヴェルレーヌ,祇遠偲世読み終わったヴェルレーヌの詩を初めて読んだ。 まず翻訳をした方の技量がすごい。 あとがきにも書かれていたように、全体を崩すことなく一語を崩すことができないのが詩であって、まさに翻訳をする過程で再創造を成し遂げている。 原著はどう表現されているのか気になるほどの描写と表現に呑み込まれた。 美しい旋律のクラシックを聴いているかのように、幻想的な世界に浸れる芸術的な詩だった。 叙情性、神秘性、厳かさ、美しさが調和していて、「初恋」が特に印象的だった。 高き底靴(ヒール)に裳裾(もすも)をたなびかせ 坂なす路欄をめぐりて歩く影ひとつ 時に涼風葉を揺らし 木漏れる光と梳けこむ 白き脚 -誰もが享受する憧憬(せかい)に心は奪われる 時として木陰のベンチと腰掛けて 植梢を眺める瞳の美しさ 嫉妬の矢となり飛び交う あげは蝶 ブラウスの襟をほどいてはららぐ その瞬間 純白の胸売にて眠る在りし日の 記憶よ明滅 (いかずち)よみがえる 砂金ときらめく暮秋のかえで 落ち葉なす時間にふたり寄りそうて 夢は泡影 夜月と浮んで腕をとり -いとも恥ずかし気に- 互いの名前を奏でてささやいた 幸悦たる言葉に満ちた 思い出よ
- 2025年9月19日マザーツリースザンヌ・シマード,三木直子読み終わった森や自然といった生態系が人のように複雑なネットワークでつながっているというのは漠然と知ってはいても、それが発見されて周りに理解してもらうための道のりにこれほどまでの苦労があったとは思わなかった。 ひとつの研究に対する想い、苦しみなどのすごい熱量をエッセンスだけ読めるというのはなんという贅沢なことかと思う。 自伝的な語りの中にかなり専門性の高い話も織り込まれて読み応えがすごい。小難しい話も多くてけっこう体力もっていかれるけど深い森を進んでいくような感覚と共に自然の癒やしを感じる。 人間は自然の一部であり、生かされている存在であるということを強く意識すべき。森や自然への畏敬の念を、マイナスイオンを感じられるような作品だった。
- 2025年9月18日アリ語で寝言を言いました村上貴弘読み終わったアリの世界が働き方や社会の在り方を考えるうえで人間の世界の縮図となりうるのおもしろい。 多様性が大事なのはその通りなのだけど、ブラックな環境で生き抜いた種もあれば、ぼーっとほどほどの環境を取る種もあって、そのどちらも正解とされる。 さらには血縁度マックスで多様性の戦略をとらないでも長く繁栄している種もある。 アリの生態には種の存続、繁栄において学ぶべき点が多いことがよくわかる。 進化の過程において、フリーライドするような一見すると悪になるものが複雑化、多様化の鍵だったりする。 なんでもかんでも正義は正しく悪は駆逐でもないとするのもおもしろい点。 人間は本当に覇権を取っているのかという前提を大きく揺さぶる。 利用されているのは誰なのか。 アリの世界を面白おかしく見ながらここまで深い思索に耽ることができるとは思わなかった。 ゴリラからアリへの読書の旅、おもしろかった。
- 2025年9月17日ゴリラからの警告山極寿一読み終わったゴリラの視点を通して人間社会のおかしな点を知る試み。 人間は人間の世界だけを見ているためにそれが当たり前になっている。人間は元々どうだったのか、今ある社会は当たり前なのかという視点を持つことを怠る。 まさかゴリラにその気づきを与えられるとは。 祖先を同じとするゴリラの社会を通して浮かび上がる人間の特性やゴリラとの違いを認識することが今の世界を改めて俯瞰して眺める一助となるのがおもしろい。 他の何かを持ってきて比べるというアプローチから自分を自分たらしめているものを知る。 あらゆることに対してこのような視点を持つことの必要性が感じられた。
- 2025年9月16日悪の処世術佐藤優読み終わった悪とは何なのか。 立場によって変わるものをどう捉えていけばいいのかわからなくなる。 プーチンも習近平も金正恩も保身がゼロではないとはいえ国を思っての政治をしている。 でも日本から見ればありえないふるまいに見えてしまう。 アルバニアの独裁者エンベル・ホッジャについては知らなかったけどここにも彼なりの強い正義があることがわかる。 自由と平等はトレードオフと言うけれど、「自由だけど食えない」と「自由はないけど飢えることはない」はどちらがいいのか。 もちろん単純な二元論ではないのだけれど、一概にこちらとは言えない。 ヒトラーのくだりもけっこう今のこの時代とリンクする部分も多いし、いわゆる独裁者とされる人たちから見えてくること、考えるヒントになることが多いことがよくわかる。
- 2025年9月12日世界のほうがおもしろすぎた松岡正剛読み終わったインタビュー形式での語りなので自著や対談のような知の応酬がないためいつもよりは超ハイコンテクスト味が少なくて話がすっと入ってくる。 「雑誌の記事として椎名林檎を取り上げるんじゃなくて、メディアが椎名林檎化するにはどうするかを考える」 松岡正剛さんの言う編集という概念を考えるうえでこの例えは参考になる。 松岡さんって度々と椎名林檎について言及してるイメージがあるけどかなり好きなんだろうな。 なんとなくその気持ちはわかる。 寺田寅彦を読んでいて松岡正剛をイメージしたけど、この本で寺田寅彦からの影響について言ってる箇所があって、俳諧精神と割れ目の科学だと。 これは松岡正剛さんを知るうえでかなり腑に落ちた。 松岡正剛という存在について、考えてきたことについてわからないなりに解像度は上がった気がする。 これだけすごい松岡正剛という存在もいまいち世間的には知られてなかったり正体がはっきりしないという感じがなんともカッコいい。 編集工学、目の付け所、考え方などいろんなことのヒントが多く、学ぶべきことが詰まった素晴らしい一冊。 インタビュアーの話の引き出し方も上手いからこそなんだと思う。 めちゃくちゃ良かった。
- 2025年9月7日宗教と暴力 激動する世界と宗教 (角川学芸出版単行本)佐藤優,松岡正剛,池上彰,石川明人,高岡豊読み終わった松岡正剛さんと佐藤優さんのポジショントークを許さない鋭い切り込みに若い二人が戦々恐々としている様子が目に浮かぶ。 池上さんは安定の対応力、池上さんがいなかったら空気張り詰めきってしんどそう。 宗教と暴力というテーマがここまで裏表くるくると視点の転回があるとは。 暴力がどこに根差すものなのかは議論の立ち位置で変わるため定義も定めにくい。 宗教が普遍主義か否かのくだりも一筋縄にはいかない視点の提示は勉強になる。 松岡正剛さんが雑多な視点から話を振る最後のパネルディスカッションを見てると、専門性を持って語ることは重要なんだけど一面的な印象になりがちなのがよくわかる。 だからこそ若い専門家ふたりにキラーパスを出す松岡正剛さんの凄さが際立つけど、愛あるものとわかっても怖いだろうなあ。
- 2025年9月6日ピタゴラスと豆寺田寅彦読み終わった風邪を半分ひいていると風邪をこじらせないみたいな話から類推して「いつも非常時の一歩手前の心持を持続するのが本当の非常時を招致しないための護符になるという奇論にも真実があるかも」と捉えたり、「弱いものの負け惜しみの中にも半面の真がある」と捉えたり、 こうしたスタンスは大事だよなと思ったところにマスクをする人しない人、免疫に差が出る出ないみたい話がさらに出てきて驚いた。 似たようなことをずっと人は議論してんだなと。 昭和9年から現代に至ってもまだはっきりしないことはもちろんあるだろうけど、 寺田寅彦の時代を経ても色褪せない語りと目の付け所のキレキレ具合がすごい。
- 2025年9月5日科学と文学寺田寅彦読み終わった科学と文学が根っこのところではつながっているのは同意。でも日本ってなぜか文系理系っていう妙な分け方をしてる稀有な国だからか両者をうまく動かしてる人材が少ない気がする。 寺田寅彦、中谷宇吉郎、湯川秀樹なんかは科学と文学のハイブリッドだし、近年でも松岡正剛、平野啓一郎、落合陽一あたりがぱっと浮かぶ。 確かに両輪をうまく稼働してて思考の深みがえぐい。 文学過多な人にとっては科学って専門性が強く見えるうえに文学自体が人文の領域に閉じ込められがちだからかな。 そう考えるとSFなんかは良い架け橋なのか。娯楽としてでも科学的思考へのアクセスは日本には急務な気がする。 伊藤計劃、ユヴァル・ノア・ハラリあたりは考証もすごいし文学から科学のルートのお手本になるかな。 現代こそ文理なんて分けてないで学ばなきゃだけど、当時からこの思想を持つ寺田寅彦ってやっぱりすごいなと思う。
- 2025年9月2日恋と誤解された夕焼け最果タヒ読み終わったどこか愛は与えるほうが美しいと思っていたけど、本能的に求め続けるのが人間だとしたらそれを自然の美と捉えて求める愛のほうが美しいとも言えるのかな。 「星座卿」という詩に触れたとき、欠落や孤独、そんな切実さが美しさとも響き合っているような感覚を覚えた。 「川じゃない」という詩では愛の交換原理から距離を置いた意志をもった自発的な愛を強く美しいとしているように読めて、強烈な印象と繊細な美しさが見事に調和してるなと、最果タヒさんの感性と筆致にうなる。 既存の価値観を揺さぶって、問いをもたらしてくれるから詩はわからないなりに触れてみたくなる。
- 2025年9月1日地政学が最強の教養である田村耕太郎読み終わったあまり本筋ではないところだけど、中国の一人っ子政策で祖父母たちからみた孫がひとりだけになったために、安易な軍事行動で子どもを失わせることは政権に対する批判を招くと。 子どもが何人いようと戦争で命を落とすことを国のためって肯定的にはなかなか捉えられないだろうと思うけど台湾有事の抑止になるって、中国での一人っ子政策の功罪はどんな感じなのだろう。 ロシアや中国の思惑、日本が取るべきスタンスなど地政学的に説明されると確かに納得感はある。 あるんだけどほんとにそんな型にはめたような思考回路で人は動いてしまうのか?とも思う。 世界情勢を俯瞰するうえでかなりよくまとまってるから入門書としては良いと思うのだけれど、説得力をもたせるためとはいえ著者の俺すげー的なマウント臭、ポジショントーク臭が少し気になる。教養を謳ったビジネス書にはあるあるかな。
- 2025年8月29日会話の0.2秒を言語学する水野太貴読み終わった語用論、統語論、意味論といった言語学の初歩に触れつつテーマとなる「会話の0.2秒の謎」に迫る構成が良くて読みやすい。 言語学的には大きな問いではあるんだけれど、問いを追う過程で見えてくる新たな問いや気づきに丁寧に向き合うスタンスが印象的。 「言語学とは、言語化に対する過剰な信頼を相対化できる学問なのである」 言語化が熱く叫ばれる今だからこそ心に留めておきたい。 人文学の価値を「自分との出会い直し」とするのもステキな捉え方だと思う。 言語学の魅力を惜しみなく伝える熱量が感じられるだけでなく、ひとつの問いからその周辺に視野を広げる大事さを学べる一冊でした。
- 2025年8月28日新世紀のアーユルヴェーダ高城剛読み終わった紀元前の医療が今なお科学的エビデンスをもって使われるのは素直にすごい。 長く残っているものにはやはりなにかしら真理に近いものがあるのかなと思わせる。 インドやスリランカで「アーユルヴェーダ」を取り入れていてもヒンドゥー教と仏教それぞれの教えと共鳴しているところはおもしろい。 柔軟性ゆえに長く残ってるとも言えるのかも。 それでもインドなどで国策として進めるにあたり他の宗教の人たちに思うところが出てしまうのは多民族、多宗教の難しさ。 エビデンスとは言うもののまだ少しほんとにやって大丈夫?みたいな施術もちらほらあるんだけど、アーユルヴェーダを取り入れた自分の身体との向き合い方には参考になるものも多そうとは思ったし、注目しておこうかなと興味は湧いた。
- 2025年8月25日読み終わった〈マジョリティにとって「政治的に正しい」態度とは、個人を属性で判断しないと同時に、集団としては属性に配慮すること〉 めちゃくちゃ高度なポリコレ対応が必須となっている社会においては、他者とのコミュニケーションから撤退するしかないというのも納得。 リベラルが加速した結果、悪性の細胞のように変異し「キャンセルカルチャー」としてリベラルとも対峙するようになったという皮肉は、こうした問題にただひとつの正解がないことの証左ともいえるのかな。 小山田圭吾、会田誠、J・K•ローリングなどの問題は表面的にしか理解してない人のほうが多いだろうし、特に日本の場合はキャンセルカルチャーの根っこにあるのが無意識や無理解な気がして怖い。 海外文学とか読んでるとけっこう背景に透けて見えるし反映されてるけど日本は政治的な話はあまりしないほうがいいみたいな雰囲気もあるし、こうした世界的な潮流に対しての鈍感さは日本って良くも悪くも島国だなって気がしてしまう。
- 2025年8月22日検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?小野寺拓也,田野大輔読み終わった短いながらも歴史との向き合い方の本質が詰まってる。 ナチスをテーマに事実、解釈、意見という三つの層のバランスを考えることの重要性がよく理解できる。 事実から解釈をすっ飛ばして意見。 恣意的な切り取りをもとにさも正しいことのように声高に叫ぶ。 SNSがあるために余計にラウドスピーカーが幅を利かせやすい現状を冷静に捉えるうえでも本書はかなり有意義だと思う。 人は誰しもバイアスがあり、無色透明な歴史認識などできないというスタンスを受け入れ、だからこそ積み上がっていく解釈を無視することなく取り入れる姿勢が問われると。 この本自体が主観的な切り取りでナチス全否定に極振りしているみたいな意見もありそうだけど、強い言説という商業的なものもあるにしても、あえてわかりやすい構図を見せる意図があるからだと思うし、ナチスの評価をめぐる議論に答えを出すうんぬんでなく、歴史学とは、専門家の意義とは、現代の情報環境とはなどを考えるうえで価値があると思った。
- 2025年8月20日呪文の言語学角悠介読み終わった呪文、ルーマニア、魔女、魔術、詠唱、護符など厨二病をこじらせている身としてはものすごく楽しい時間を過ごせた。 呪文を分析するうえでの前提知識として説明されるルーマニアの魔女について、文化についてが興味をそそられっぱなし。 日本って魔女好きですよね(偏見か?) ルーマニアの呪文のバリエーションのなんと多いこと。 それらをコーパスとして言語学的なアプローチをしていく試み、最高。 学術書ではないからかなりライトな書き方をしてて、ガチガチな言語学テイストなものもあれば是非読みたいなと思う。 「特殊なテキスト構造が魔力を生産し、ことばに力を持たせて呪文に変える」 ことばが世界を切り取り表現する鍵になって、そこに魔力を感じる仕組みを合わせると。 言語学って実はかなり守備範囲の広い学問でめちゃくちゃおもしろいのに地味な感じで見られがちなのなんでだろう。
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