
ワタナベサトシ
@mizio_s
2025年3月6日

男ともだち
千早茜
かつて読んだ
感想
千早茜流“ふつうの”恋愛小説。恋人・不倫している愛人・失恋もセックスも妊娠もある。そして男ともだち。
巷間しばしば「男女のあいだに友情は成立するのか」などという問いが提示され、矛盾だ偽善だと喧しく語られることがある。男ともだちなんて実在しうるのか。しょせん“理解のある彼くん”じゃないの?
主人公のは二十九歳のイラストレーター。大学の先輩のハセオと七年ぶりに再会し、ネットカフェで腕枕されて一夜を明かす。
“男ともだち”としか言いようのない関係のふたりを、周囲の共通の知人は理解できなかったり呆れていたり。……「ふつうの」恋愛小説?
常識をさらりと揺さぶってくるのが千早茜。あたりまえとされていること・自然だと思われている価値観・現代に生きる人たちが諾々と従っている倫理観などをいったん解きほぐし、バラバラにして浮遊させ、素の状態にして眺め直させてくれる。
そこで示される「正しさ」が読者にとって必ずしも都合のいいものとは限らない。