
橋本吉央
@yoshichiha
2025年6月25日

読み終わった
総じて、世界を「エントロピーの法則」で見ることの意義やそれによる気づきは非常に興味深く思ったが、社会への提言という意味では説得力なく終わった感じであった。
特に、社会における所得の分配が、閉鎖系における気体のエネルギー分布のあり方である「ボルツマン分布」と近くなるというのはなかなかの驚き。エコノフィジクスという、物理学の考え方が経済学の中で現れる分野というのがあるらしい。情報エントロピーから熱力学エントロピー、そして経済へという、情報科学・自然科学・社会科学の共通の法則(的なもの)のつながりはとても興味がそそられる。
経済発展、開発を続けることでエントロピーが増大し続け、大きな社会の危機につながる……と、社会科学的に、エントロピー増大に向かう世界に警鐘を鳴らすパートもあり。エネルギー問題、環境問題、食糧問題、そして国と国の争いなどを考えると言っていることはその通りだと思う。SDGsも、持続的に「開発」をしていくのではやはりエントロピー増大を止められないと批判する。
言っていることはわかるけど、じゃあどうするのか、というところは弱い。江戸時代は低エントロピーだった、その背景には浄土思想があるはずだ、みたいなことを言われてもあまり説得力がない。宗教は心を落ち着け、精神のエントロピーを下げる、というのは比喩的にはわかる気がするが、最後に提言にもならないレベルでさらっと言われてもなあ、という感じ。
